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「んで、私を捕まえてどーしたいの?」



「あのな、ゴッドさんよ・・・テメェは自分の状況分かってんのか?」



エレは呆れたように主人公を見下ろす
何の疑問も持つことなくゴッドなどという呼び名を使っているので
主人公は笑いを堪えるのに苦労していた
そんな彼女は現在、檻の中で横たわり片手で頭を支え寛いでいる
彼女の緊張感の無さにエレが気を緩ませてしまうのだが
することもなく、殺される心配もないのならば
捕まえられている状況はあまりにも退屈なようだ



「まったく・・・こんなふてぶてしいヤツ、知り合いにいたような気がするぜ」

「あ、それ私も思った」


エレと主人公は暫く視線をぶつけ合わせたが
やはりどちらも答えにはたどり着けずに首を傾げた



「んで、私を捕まえてどーしたいの?」


「答える必要は無い、黙って捕まってろ」


「・・・・・・私の『光』を、利用するって」


影の世界、それに似合わない単語が何度も付いて回ることで
主人公が思い出したのは大妖精に頼まれた『ソル』のことではなかった









 暗い



 誰かが嘆いている

 暗い暗い世界




 それはよく分からない異国の言葉で
 彼らは歌うように何かを嘆いている



 主人公にはその感情が分かった

 彼らの闇と一緒に
 その気持ちが流れ込んでくるから




   光が欲しい



     光が足りない










いつかの夢の中で彼女が見たものが
急に記憶の山から掘り起こされて
妙に頭に引っ掛かったのだ






「エレ、影の世界は今、何か光不足だったりするの?」



「っ、テメェ、何故それを」


エレは不意をつかれた心地で顔をしかめた
その反応から答えは明らかだった

主人公はその事実から一つの仮説を立てる
少ない根拠と女の勘だけが頼りだが
何故か彼女の中ではもはや確信に変わっていた





「だったら、・・・もしかして」





− ゴ オ ォ ォ  ォ



謎が紐解けていく感覚に鼓動が速まるのを打ち消す轟音が
すぐ側に見えていた、森の神殿の、その入り口から漏れ聞こえた

漸く緊張感を取り戻し身を構える主人公に対し
エレの方はいつの間にか目に見えない速さで双剣を抜き迎撃体勢を取っている




「何だ・・・、つかあの神殿は何だ」


「知らないわ、私はこっちの世界の人じゃないし」


「でもこのアクタの景色は光の世界の記憶だ!知らないで済ますなよボケが!」


「知らないってば!!誰の記憶だって言うのよ!」





《永き時に閉じられてなお、消えること叶わず・・・・・・》




「何か言ったかゴッド」


「・・・言ってないよ、エレくん」







《魔王の意志、魔王の力、魔王の記憶、我は影として全てを映さん》






周囲の景色が黒く渦巻いている
不気味な声の響きが、段々と形成されていく別の空間の広さを限りあるものにしていく



「なに、どうなってんの・・・!?」


「悪質な記憶の化け物に捕まっちまったようだ」


いつの間にか現れた円筒型の部屋の中央に
ポツンと置かれた二人を取り囲む壁には
複数の絵画が並べて掛けてある
どれも同じ風景を描き、味気ない油絵ばかりだった


エレが固唾を呑む音だけがあった空間に馬の駆ける音が徐々に大きくなり混じった


「エレくん!後ろの、絵に・・・!」


主人公が言い終わる前に、絵画の『中』を走りこちらに向かってきた騎馬が
平面を突き破って、現れた




《我が主に代わり、貴様の神の力貰い受ける》



「ガノンドロフ・・・!、じゃない!?」


「誰だろうと関係ねぇ・・・『記憶』ならば、排除するだけだぜ」




黒馬に跨る男、それは忘れられた『記憶』として生きるファントムガノンだった











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