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「おい、なんか今……光った?」




茜色の空に

一瞬の光をとらえた者はあまり居なかった

偶然にも空を見上げていた男は段々とその事実の重大さに気づき
居ても立ってもいられないというように一人奇声を上げた




「クレ!!こりゃ一大事だ…っって居ねぇ!!あんにゃろ!何処行きやがった!」


自分の傍に居た筈の人物を呼び叫ぶが
広場には誰も見られず静けさに響き渡るだけに終わった





「あの光…、もしかして」

「『アクタ』に落ちたじゃないですかね、エロさん」


一人だけだったはずの場に突如増えたやる気のない声に
男は激しく食いかかった





「エ、レ!!破廉恥な名前定着させようとすんなボケ!俺の親に謝れ!そして俺に土下座しろ、まずそっからだテメェは!」


「あたしだてボケなんて名前じゃないしね、死ねエレ」


「おい、ドリュー、テメェ俺の地位を言ってみろ」


「………影国騎士団の団長ですね」


「口調に気をつけろ、俺の威厳が損なわれんだよ」


「年下に敬語したくないです、エレさん」



エレと呼ばれた男は深い深い溜め息を出して自身の短い頭髪をガシガシむしった
すっかり忘れかけていた先程の光の件を思ってエレは再び空を見上げる

それはいつも通りの空だった





「ドリュー、見たか?さっきの」



「あたし見てませんよ」


「嘘つけ!!テメェ絶対見ただろ!」


「だて、エレさんまた無茶なことするでしょ、あたしもう上に目つけられたくないです」


「テメェの上司は俺だ、アクタまで同行しろ、ドリュー」



「…ラジャです」












































ほぼ同時刻

影の世界の中心地にあたる宮殿の上階にもまた
空を裂く程の光を見たものが居た



「あぁクレ、来たのか」



「はい、ご覧になりましたか」



「丁度な、黒雲を眺めていたところだ」



広く見晴らしの良い場所に一人佇む女の向こうには
素晴らしい画になりそうな夕暮れが雲を黒く染めていた

クレという名の男は
一族の長にあたる彼女がこちらに振り返る手間さえも惜しく思われて
淡々と用件のための言葉を続けた




「恐らくは光の世界からの侵入者か、と…アクタに到達したことを確認しました」



「アクタか、面倒だな……クレ、オマエが行ってこいよ」


「しかし自分は、姫の…―」


「ワタシは大丈夫だ」


「畏まりました」



クレは深々と頭を下げ
姿を闇と同化して消えた

後に残った女が何かを思い出して笑みを浮かべた



あの光での旅はどれぐらい前のことだったか
思い出そうとすればいくらでも光景は思い出された



「もし、リンクだったら…」


報告された侵入者の姿を想像して彼女は首を振る
影と光の道はとうに絶たれた
誰でもない彼女自身によって







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