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「あっ、こら!逃げるな」

未だ背筋を走る何とも言えない感覚に苛まれながらも
男に目をやると静かにその場を立ち去ろうとしていたので
主人公は自慢の跳躍を利用して男の背中に蹴りを入れた


「うっ、ぐ、…!貴様」


ついでに俯せになった男の背中に座り自由を奪う



「貴方の目的は何なの?勇者の記憶って何?」


「……フン」


問いただそうにも男は態度を変えずに鼻を鳴らした
しかし主人公も必死だった
やっと見つけた勇者への手がかりになりそうだったトアル村のモイとコリンはやられてしまったし
何よりこの男は何かを知っている




「お願いします、教えてください!この通り!!」


「人の背中に乗って懇願するとはどういう神経だ貴様」


「だって絶対行っちゃうでしょ!?背中からどいて頼んでも、頭が高いとか言って土下座させておきながら放置するでしょ!?」


「いいから退け、重い」


最後の一言は
テンションの上がりきった主人公の青筋を破裂させるには十分の威力を備えていた



「重いって言葉は女に使うものじゃねーっての!!」

「いっ、痛っ!いだだ!!こ、っやめろ!!」


主人公は男の長耳を更に長く引っ張り耳元で叫んだ
いくら人間離れしたその男でも耳は痛かったらしい



「くっ、この…!」


男は身体を地面に出来ていた影に同化させた
主人公は急に尻の下に支えを失い地面に座る羽目になった
それとほぼ同時に男の姿が主人公の背後に出現して首元に黒剣を突き付けた


「ぅ…ちょっ、と」


「俺は勇者の『影』…勇者の『記憶』は俺を成す糧、ただそれだけだ」


主人公には理解できなかった
影?…糧?何をいっているんだこの男は


「…貴様も勇者について知っているようだが、何故その記憶が無い?」


「…さぁ?私はある方々の命で『時の勇者』捜索中だけど、実際に勇者に会ったことがないからじゃない?その記憶とやらが無いのは」


男はしばらく何も言わず
主人公の言葉に何かを考えているようだった



「……隙ありぃ!!」


主人公は素早く男を後ろに突き飛ばすと
矢立てから金色の矢を一本取り出した
男はてっきりその矢を弓で射るものかと思ったが
主人公は矢をそのまま男の左肩に突き刺した




「……っ、これは」


男は肩を押さえて膝をついた
矢は深くまで刺さっていたが
男の身体から血は流れなかったし
彼自身痛そうな表情はしなかった


「光の矢か…?」


「さすが、魔王の弱点だけあるわ…『影』の貴方には効果的じゃない?」



主人公は男を見下ろしニンマリ笑った
形勢は二転三転して主人公に軍配があがった








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