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「そんでサァ、その時の勇者の影のカオとイッたら…!マジうけるんだヨネ」


「くすくす、愉快な方ですのね」


「本当にもう、クスクスっ…えぇ何ていうか、お馬鹿さんですわ」


「あら、もうお菓子がなくなってしまいましたわね」



輪になってお茶とお菓子の一時を楽しんでいるのは
ジョオ、ベス、エイミー、それにムジュラだった

何故この三匹とムジュラが打ち解けて無駄話に興じているのか
そんなことは自分達が知りたいというくらいであった

三匹を追い掛けていく過程で何を誤ったのか
ムジュラはすっかり彼女達と意気投合を果たしてしまい
現在は処刑場内の一室でティーパーティを催している


「でも驚きましたわ」


「えぇムジュラさんが…こんなにも面白くて素敵な方だったなんて」


「マァねぃ、ボクは女の子には紳士なんダヨ」


「クスクスッ…」



ムジュラは古びたカップに注がれた紅茶を飲み干して、プハっ、と息を吐く
それにまたポウ達が笑い合う


「ねぇ、何だかムジュラさんといると…懐かしい感じになりますわ」


「ジョオ姉さまも?私も、なんだか、そう姉妹四人が一緒に居るような気になってしまうの」


「そうですわね…今頃どこにいらっしゃるのかしら、メグ姉さま」


それぞれ手に持っていたカップを、テーブルが無いので仕方なく、床に置いて
哀愁漂う雰囲気を作り上げた

ムジュラは一人きょとんとして空になったカップを指に引っ掛けてブラブラしていたが
突然、あ、と声を上げた




「メグって、ボクが食べちゃっタよ」




パリンッ、と煩い音が三個分同時に聞こえた



「え、た、たべた…?」


「…ど、どういう…、それはつまり」


「………」


エイミーとベスが顔を見合わせて会話にならない単語を言い合い
ジョオは気を失ってフラッと床に落ちた


その様子にキヒヒと口の端をつり上げて
ムジュラは更に付け足した



「あ、ボクちょうど魔力が無くなってるからサ…オマエらも食べてイイ?」



「えぇぇ!!?あら、あの、ベス姉さまどうしましたの!?」



ムジュラがニヒヒ、と笑う様に反応を示したのはエイミーだけで
気絶中のジョオはさて置きベスが反応を示さなかったのは

ムジュラから顔をそらすようにしながら微かに頬を染めていたのがそれを物語っているようだった



「(エ、エイミー、落ち着くのよ、落ち着いて聞くのよ)」

「(落ち着いてますわ、ベス姉さまこそ落ち着いて!!それよりムジュラさんがおかしなことを…っ!)」

「(それは、それはつまりっ、求愛ですわ、そのつまり、食べると言うのは、俗語で…っ)」



真っ赤になりながら小声でエイミーになにやら間違ったことを伝えようと必死になるベス
しかし彼女の努力も虚しくエイミーは首を傾げるばかり


ムジュラは楽しそうに三匹の様子を見ては時折舌なめずりをしていたが


急に嫌な寒気を背筋に感じて思わず立ち上がった





「…?…む、ムジュラさん?」




「ナンで…あいつが此処ニ?」





ムジュラは嫌な汗をかいていた
とてつもなく嫌な感じがした

すぐにこの場所から離れてしまいたかった
すぐにでもこの砂漠からずっと遠い場所に行きたかった


ムジュラはしばらくその場で狼狽して頭を掻き毟ってから
その部屋を飛び出すため走りだした


「あぁ!ムジュラさん!?」

「逃げたほうがいいよ、オマエらも、仮面にされるカラ!」


「え、?ぇ、!」


「紅茶美味かったヨ、バイバーい」



二人の姉の状態に一人混乱するエイミーに言い残して
ムジュラは暗い通路に消えた







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