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「ピギャァァァァぁぁぁああ!!!たたたたすけてぇぇぇええ!!」


モンスターが死ぬときのような声をあげながら
主人公は逃げていた
必死に逃げ走っていた

そんなにも全力を尽くしてまで何から逃げていたのかなんて聞いてはいけない
彼女の口からはとても言うことはできないし
背後に居るであろうソイツらを目視することなんて尚更だ


「ギイャギャギャー!」

「キルキルッ!!」

「キシャシャシャ」

「イィィィィーヤァァァァァぁあだぁぁぁぁ!!」


狭い通路に犇めきあい
我こそはと同族を押し退けて主人公を追跡してくるのは
吐き気を催すような数のスタルベビー

主人公が泣きながら叫びながら走る
背後から何とも骨々しい音と不気味な鳴き声が迫る
更に走りながらもスタルベビーは床砂の中から現われてその群れを大きくし
主人公の精神を追い詰めていく


そう、なんと言っても彼女は亡霊やらミイラやらその類のものに滅法弱いのだ



一直線だった砂漠の処刑場の通路は奥へ進むにつれて曲がり角の多い造りになり
その先が見えない恐ろしい未来を思わせる死角のコーナーを曲がるとき
主人公は何も怖いものが居ませんようにと願って鋭い走りを見せた


「ってぎゃぁはぁあぁぁぁ居るぅぅぁああ!!!」


「ヴグオオォォォ!!」


主人公が曲がった五つ目の角にはスタルフォスが錆びた大剣を大きく振りかぶって待ち構えていた


「っしゃあぁぁぁー見逃してぇぇぇえぃ!!」


主人公は反射的に矢立てから光の矢を引っ掴み
地鳴りのような叫びを発するスタルフォスの口にその束をブチ込んだ

数秒後にはその光の清浄さにたえられずカルシウムが派手に破裂する音が聞こえたのだが主人公は気にしない

光の矢はここでも絶大な効果を発揮したがあまり積極的に使おうとする動きが主人公には見られないで
やはり彼女はただ叫びひたすら逃げ続けていた








「はぁはぁ、やばい…何とか撒いた、けど」


息も絶え絶えになりながら
膝に手を付き中腰の状態でしばしの休息をとる主人公
しかし先程の逃走劇では本当に彼女の体力を使い果たしてしまったらしく
一度立ち止まってしまった今、再び追い掛けられる事態になっても全く動けそうにないことが予想された

主人公はゲホッ、と喉を痛めながら何処とも分からない通路の脇に身体を休める

でたらめに逃げ回っているうちに現在地が分からなくなり
いつになったら鏡の間に行けるのかと考えると気が遠くなってしまった

ゴツゴツした石材の壁に寄り掛かっても
すり減った神経が休まりそうもないのだが
それでも無理矢理休もうとして向かい側の壁をぼんやり見つめていた主人公の目にそれは映った





  大いなる力
  陰りに贈り

  悼み 贐 
  死者の虚ろ



「何あれ、…いたみ、…はなむけ?」



何の碑に書かれるでもなく
誰かの墓に彫られたものでもない

端書きのように、石壁に粗末に綴られた
誰かに宛てた言葉でもないようなその文字列に近付き
そっと手を当てていると、主人公は何か懐かしさが込み上げてくるのを感じた

「誰の、言葉だろ」


それを書いた主の方が気になってしまって
その言葉の内容などまったく解読する気にはなれなかった



「…ま、いっか」



しかしやはり何かのヒントすら掴める気がしなかったので主人公はすぐに諦めた

少し遠くの方から不気味な笑い声が聞こえてきて
過度に警戒した主人公は早々に移動するため立ち上がった



するとそんなタイミングを見計らいでもしていたのか

上方から2体のギブドがボドボド、と落ちてきて恐怖の叫び声を上げた



「ぎゃぁァァァァ出たあぁァァッ!!」


それにも負けず劣らず主人公もしっかり悲鳴をあげた







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