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(ああ…本当に弱くなったのかもしれない)


金属同士がぶつかり微かに擦れ合う甲高い音を目の前で聞きながら
勇者の影は情けなくもそう思った
まさかムジュラと接近戦でしかも物理攻撃での組み合いでここまで互角になっているなんて

勇者の影がぼんやりしていると
ムジュラは段々と声に哀しみを織り交ぜてきたのが聞こえた



「ヤッと、欲しイトか、思えるようにナッタのに!、主人公が欲しいのに!!捨てられた!!」




ムジュラの力が抜けていくのがわかる
組み合っている最中だったが
勇者の影が剣に乗せていた体重を引くと
ムジュラの手から鎌が落ち
重々しい金属の音が床から聞こえた
力が抜けたように頭を俯かせてムジュラは両腕をダラリとさせた

ムジュラの言うことが何のことか勇者の影にはよく分からなかったが
どうやら以前よりも素直に主人公への好意を自覚したらしい







「貴様は、どうしたい」







「主人公に、会いたい」




「…俺もだ…そうしたいから、追い掛ける…本当に俺たちが捨てられていて、引き止めたところで拒絶されてもだ…




 …貴様はただ置いていかれて、納得できるのか?」





十分な沈黙が漂い
時間が無音で過ぎていく

ただ誰もこんな形で別れることを望まない
ムジュラという人格が納得する筈もないと
勇者の影も分かっていた

ムジュラは微かに肩を震えさせた
飽きもせず泣いているのかと思えば漏れてきた声は笑っていた





「…キヒ、ひヒ…、できないな…主人公に、お仕置きする迄、気が済まナイね」



それもどうか、と勇者の影は思った












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