第15回300字SS「口笛」

第15回300字SS「口笛」


お題:「夜」

ジャンル:和風ファンタジー





”夜に口笛を吹いてはいけないよ”


うちはどっちだろう。
べそをかきながら、見知らぬあぜ道をとぼとぼ歩く。
提灯の明かりは見えず、蛙と鈴虫の大合唱も、ひとりぼっちの心を慰めてはくれない。
けろけろ、りんりん、ぴゅぅっ。
ふと聞こえた音に耳を澄ます。
人の出す音、懐かしい響き。
ぐしゃぐしゃの顔を上げ、口をとがらせ、懸命に同じリズムを吹き出す。
へたっぴな口笛が、やけに山に響いた。
ややあって返ってくる、同じリズム、同じ音。
兄ちゃんだ!
音の方向へ走りだす。
蛙の声はもう聞こえない。
目の前に立つ大きな黒い人影。兄ちゃん、兄ちゃん、会いたかった。

あれ?兄ちゃん?
は、
去年、山で

毛むくじゃらの大きな手に、首根っこを掴まれた。




[ 48/50 ]

[*prev] [next#]
[目次]

[小説TOP]
25




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -