web&アンソロジー企画「掌編SS俺のグルメFESTIVAL」(公式サイト)様に参加させていただきます。 3作品目。 ジャンル:オリジナル 民族風ファンタジー 注意書き:1日2リットル前後摂取しましょう 飲む。 母が、酋長が、皆が飲む。ごくり、ごくりと泉の水を飲む。 俺は飲まない。数日前の雨水を、命をつなぐ糧にする。こくり。木の桶に貯めた水は不思議と澄んだまま、甘く柔らかく喉を潤し、体中に染み渡る。どんな果実の汁も、甘味づけの薬草も、この雨水には勝らない。 シャーマンは、「あの娘が憑りついた」と一言呟いた。 幼馴染が泉に投げ込まれた翌日、待望の雨が降った。だからこの雨水は、彼女の涙だ。血液だ。命そのものだ。 そして俺は知っている。彼女が毎夜集め歩き、装身具に詰め込んだものを。村中を侵すに余りある毒草。毒虫。苦悩。怨嗟。涙。 この集落はじきに終わる。俺は一足先に。 桶の最後の一しずくが喉を撫でる。 ああ、甘い。 *掌編俺のグルメFESTIVAL参加作品* 1作目「あつあつドーナツ」 2作目「大地の林檎」 3作目「甘露」 4作目「Von Grimoire zu Kochbuch」 [目次] [小説TOP] 5 |