第13回300字SS「都会娘と田舎のおばさん」 お題:お盆 正月まで一緒くたに来たかのようなこれは、一体何事だ。 旧家に嫁いだ典型的都会娘を待っていたのは、目の回るような忙しさ。 朝からひっきりなしに客が訪れ、線香をあげ、近況報告ついでに一服あるいは一杯。 盆を小脇に抱えて走り回る。実家じゃこんな事は。泣き言が頭をよぎる。 出がらしのお茶を立ったまま台所で啜っていると、「ここいらでお暇」「お構いもしませんで」の声が届く。肝心の旦那は挨拶回り、義母は居間。 味方なんて。 しゃがみこむ刹那、勝手口が開いた。顔を出したのは隣のおばさん。 「これ、食べて。わかるわ、私も都会育ち」 こそりと耳打ちするおばさんの手には小さな水菓子。 「お腹の赤ちゃん、楽しみね」 ほろり、涙が一粒。 [目次] [小説TOP] 3 |