鋭く冷たい切っ先をすっと真下に下ろし、ふうと溜めていた息を吐いた。
神経を尖らせピリピリと肌に空気の流れを鋭敏に感じるくらい、同時に心は穏やかに平静を繕う。

次に目を開けた時、目の前には大きな透明な巨人がいた。
それは垂れた自分の汗からむくむくと成長した巨人。
きっとそいつを睨みつけナイフを向けた。
軽く跳躍し懐に入る。横にひとつ凪ぐと空を切るひゅうという音がした。
透明な巨人は輪郭を徐々に薄れさせ、背景の青空と同化していく。
ひとつ、肩で大きく息をし呼吸を整える。
意識下の無意識。意識と無意識の狭間。
見えてくる襲いかかる様々な形の魔獣。
足元からは茶色いデッキが盛り上がり、木の固い魔物になった。
青い空は鳥となり軍勢を率いて襲いかかる。
背後には自分の影が自分を覆うように手を伸ばす。

持っていたナイフを銃に持ち替え、走りながら弾を撃った。
意識しない一連の動きは、体が覚えた戦いの本能と言うべきか。
魔獣の姿を変え絡まり合い襲いかかる洪水のような、なめらかな気体と液体の流れが体を絡め取ろうとする。逃げながら立ち向かい、戦うという意識だけを持って挑んでいく。




「ザード」

凛と響く自分を呼ぶ声に、ぱっと目を開けた。
いや、もともと目は開いていた。しかしその目は実際の風景をとらえてはいない。もっと内側を、空想と現実の狭間を見つめていた。
もちろんそこには魔獣なんておらず、ただただ平穏な空がある。

「ザード、休憩にしましょう」

ニアが笑ってタオルを差し出した。
汗で滑る手のひら、銃をホルダーに仕舞う。ベストの内側を探って、ナイフが仕舞ってあることを確かめる。
ザードは肩をぐるりと回して、笑顔を見せた。

「うん」
「ふふ、汗びっしょり。シャワー浴びたら?」
「そーする。あー、疲れたぁ!」

すっきりとした表情、思考でザードはタオルを手にした。

モドル















































































































































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