真っ青な空の世界から一転、赤黒い土のある世界に来てしまった。

俺はことあるごとに空を見上げる。それはどんな思いからかわかっていたけれど、気がつかない振りをして、微かに見える灰色の雲の上にあるあの真っ白な雲を思い浮かべた。
澄み切った空に、まぶしい光。漂う浮島、緑の豊かな森、活気のある町、人々の笑顔。そんなものを想像した。まるで目の前にあるように鮮やかな映像が浮かび上がる。が、彼女の顔を思い出した瞬間、その幻はぱっと色あせどろどろと溶け出すようにして消えてしまった。
目の前には変わらない不毛の地。小さな花すら根を張ることのできない不可侵の地。その地は俺に彼女の幻を見せることを許さない。

現実は厳しいなんてこの歳になって気がついたことでもないだろう、自分に言い聞かせる。テーゼ委員会に連れ去られた彼女の、あの表情。無様にも地に落ちた自分。きっと彼女を追いかけ救い出すのだろう親友の、これから。
いろいろなことが暗い影を伴って思い出され、想像が膨らみ、結末を予想した。

「ずっと遠くなってしまった」と俺は見えぬ空を見上げ呟く。きょとんと隣を歩くラナが顔を上げた。幾度か瞬きをする様子には素直な気持ちがこめられていた。「遠い?」彼女は聞き返す。

「あぁ、遠い」
「そうかな」
「どうしてそう思う?」

少なくとも近いと言い切れるほどの距離ではないと、身をもって知っていたので思わず聞き返してしまう。
ラナはまっすぐにこちらを見て、決して近いとは口にしなかったが、意思を持ってこう言った。

「遠くないよ、」

俺は何が遠くなったかは言わなかったから彼女は距離のことを言っているのだと思った。しかしながらその言葉からはもっと違う意味がこめられているようで、でも彼女の表情に何の含みも見られない。
「すぐに会えるよ」とラナが言った。姉に似た大人びた感じの笑顔で。
彼女は単純に自分を励ましているのだろうか。ほんの少し俺は混乱してしまった。

ラナが弾みをつけて俺の手を引いた。
とりあえずは与えられた少しの希望を胸に、どうして俺がこの地にきたのかその意味をもう一度考えてみることにした。
彼女の背中を追いかけながら。


UNSEEN

モドル







































































































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