遠回りは近道(鳳樹)
少しだけ遠回りして帰ろうか、なんて話してゆっくりと歩く。日が落ちる前には絶対送ってくれる彼だけど、誕生日だから少しでも長くいたいと思っていることが嬉しい。
普段通らない道は色々な発見に溢れている。
「綺麗なイルミネーションだね」
「とても素敵な家だね。いつかは君とこんな風に住めるのかな」
「まだ気が早いよ」
「そう遠くないかもしれないよ?」
笑いながら話しているけどあながちすぐそんな日が来ちゃいそうだな、なんて思うのは相手が彼だからだろうか。少しだけ繋いだ手を握りしめたのはそのあらわれかもしれない。
「まだ帰りたくないなあ……」
「じゃあもう少し散歩しようか」
「でももう暗いよ?」
「俺が帰りたくないだけだよ。誕生日なんだから少しくらいわがまま言っても許して」
そんなこと言われちゃ否定はできない。今はまだ妄想の、少し先の話をしながら聖夜は幕を開ける。