四季折々 | ナノ

星に祈らなくても




七夕の日には無病息災を願ってそうめんを食べると言うが、暑いから食べやすいし好きなものを入れてアレンジもしやすく丁度いいので食べているところも正直ある。乾くんと一緒にそうめんを食べる機会が増えると普通のそうめんでは飽き足らず、麺の色を変えてみたり色々な薬味やつゆを持ち寄って食べるようになってきた。これに限らない話だが、乾くんと過ごす時間のために趣向を凝らすのはいつだって楽しいものだ。


◯◎◯◎


「二人きりなのにかなり豪華なものを用意したね」

どこで買ったの?とかなり興味を示してきたので大成功と言っていいだろう。
せっかくの行事食なのだからイベント感を意識したいと考えた結果、大きなそうめん流しマシンを持ってきた。大きいだけではなく、コースを変えることも出来て更には光るから少しやり過ぎたかもしれないと思っていたがそれは杞憂だったようだ。

「二人だとずっとどちらかが流さないといけないけれど、それは考えてなかった?」
「うーん、別にずっと流すの苦じゃないし自分で取れるしいいかなって」
「じゃあ、変な流し方だけは勘弁してもらいたいな」
「どんな流し方を想像しているの?」
「何も想像していないよ。なまえの行動はよく予想外の展開になるからね」

早くそうめんを茹でようか、と言う乾くんの手には既にプレーンな麺と一緒にマシンの光に合わせた三色の麺が握られていた。



茹でたそうめんがスライダーに流れるのを楽しみながら、ちらりと乾くんの様子を見る。自分ばかりはしゃいでいないかと不安だったが彼は彼なりに楽しんでいたようで安心した。

「もう麺はこのくらいにしておこうか」
「そんなにお腹いっぱいに見えた?」
「なまえとの食事は何度もしているから、少しの変化で分かるよ」

乾くんの言葉にこれまでの積み重ねを感じて少しきゅんとする。いつもより少し浮ついた声でご馳走様でした、と言って片付けを始める。二人並んで何かをするのも私にとっては好きな時間の一つだ。

「なんだか普段より楽しそうだね」
「来年の七夕は何をしようか考えてるの」
「それは気が早いと思うけど」
「そうだね。まあ、乾くんと色んなことしてきたなって考えていたから楽しいのかも」

片付けが終わったらハンドクリームを塗るから声を掛けて欲しい、と彼が言うとそれぞれの作業に戻る。来年の七夕もそれ以外の日でも一緒にいる時間は何だって特別な思い出になるものだ。


prevtopnext
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -