四季折々 | ナノ

思い出をまとって




袖の長さに煩わしさを感じ始めると衣替えをするべきかもしれない。クローゼットを開けて一つ一つ洋服を手に取ると自然と乾くんのことを思い出すようになっているから我ながら少し重いなと感じる。
少し整理すると思いのほか夏服がないような気がした。それなら、と考えて彼にメッセージを送る。

「新しく買う服を決めて欲しいなんて今までなまえに言われたことなかったから楽しみだったけれど、何がきっかけだったのか教えてもらえないかな」
「確かにこんなこと頼むの初めてだったかも」

乾くんに言われて着ている服を彼の好みにしようなんて一度も考えたことがなかったなと思い出す。私が人の好みに合わせることをあまりするようなタイプではないから尚更そう思うのかもしれない。

「この間、衣替えをした時に服を見たら乾くんと何をしたのか思い出したの。今までは自分の好きな服に乾くんとの思い出ができていたけれど、乾くんに服を選んでもらったら服自体が乾くんとの思い出になるかなって」

私の話に耳を傾ける乾くんはなるほど、と呟くと少しだけ口角を上げる。データマンである彼のことだから私の珍しい行動を楽しんでいるのだろう。

「ところで、衣替えは具体的にいつ頃した?」
「先週の日曜日。……乾くん突然すぎ」
「すまないね。今後の衣替えの参考になるかと思って尋ねたんだ。他に何も聞いたりしないよ」

するりと私の手を取り乾くんは歩くスピードを速める。心なしか普段よりも早足な感覚がして彼の楽しさが伝わってくる。

「なまえは今日欲しいものはある?」
「頭から足まで全身。完全乾くんプロデュースで」
「なまえのその思い切りの良さは一緒にいて面白いと感じるよ。ちなみにそれなまえにもやってもらいたいんだけどいいかな?」
「私も乾くんのコーディネートするの?楽しそう」
「予想通りの返答だ」

暖かな日差しと同じように暖かな心地の会話と、繋がれた手の暖かさ。これから選んでもらう服も一緒にこの暖かさも私の心に残り続けるものになる。


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