四季折々 | ナノ

若菜色の幸せがあふれる




好きなものはいくつあってもいいとは限らないなと山盛りの緑を前に考える。乾くんと一緒にいる時間はいくらでもあっていいけれど、これに関してそうは言えない。

「これまた大量だね。一人じゃ食べきれないって言っていたけれど想像以上だ」
「私もこんなにあるとは思わなかったから……」

目の前にあるのはゼンマイ、ワラビ、タラの芽などといった山菜類。春を感じる食材であるし食べるのは好きだがいかんせん量が多すぎて私だけでは消費できない。頂き物はこれだから大変だ。

「天ぷらは鉄板として、量が多いから保存がきくものも作らないとね。おひたしとか白和えとか」
「かなりの品数になりそうだね。でもなまえの手料理がしばらく食べられるなんて嬉しいよ」
「ありがとう。また食べたいものがあったら教えてね、すぐ作る」

アク抜きをするために鍋に水を入れて火にかける。無意識のうちに鼻歌を歌っていたようで隣の乾くんが優しく笑う。

「なまえがこんなに乗り気なのは楽しいからかな?」
「乾くんそろそろ名探偵になれそう」
「なまえのデータはすぐ変わるから集めるの大変だけどね。何にでも興味を持つ君が何をやりたいのか考えながらデートの計画を立てるのはなかなか面白いよ」

楽しそうに話すと俺は何をしたらいいかな?と私に尋ねる。あらかじめメモしていた天ぷら粉のレシピを取り出し手渡す。私の料理の味のデータが欲しいと言われてからメモを用意するようにしているが、これだと自らデータを見せているようなものだ。彼にならきっと何を見せても後悔はしないだろうけど。


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