四季折々 | ナノ

小さな好奇心




バレンタインにソワソワしていること気付き、自分も女の子なのだなあと実感する。チョコレートを作るのは楽しいけれど、えらく時間がかかってしまうから今年は厳しそうだ。それならば、と買ってみたチョコレートは彼にあげるための物と言うよりは自分の興味が勝ってしまったセレクトになってしまった。たまに彼へのプレゼントを選ぶとき自分の好奇心が買ってしまうのは彼女としてどうなのだろうか、とその度に自問自答を繰り返す。

「カカオの産地別で食べ比べができるんだね。ホワイトデーに向けてのデータが増えそうだ。ありがとう、美味しく頂くよ」

それでも乾くんは私の心の内を知っているのか何も言ってこない。そのほうが嬉しい時もあるけれど今回はそうではない。むしろツッコんでくれないとモヤモヤが連日続いて昇華できないままだ。

「ねえ、乾くん」
「言わなくていい。なまえの好奇心が勝ったのは分かっていたよ。君らしくてとても素敵だ。そんなところが好きなんだけど、おかしいかな?」

笑って話す乾くんは嬉しさを隠しきれていない様子で、彼も恋人からのチョコレートを楽しみにする男の子の一面があったと感じさせる。そんな彼を可愛いなと思いつつも、私のことをお見通しな乾くんに敵わないなと白旗を上げる。

「むしろ二人しておかしいかもしれないよね。恋人へ贈るものを選ぶのに自分の欲求が勝つのも、それを知ってますます恋人のことを好きになるのも」
「世間一般的に見ればちょっと変わっていると言われるかしれないね」

二人でチョコレートでも食べようか。乾くんから差し出された手を取って歩き出す。ゆっくりと絡み合う指はかなり冷えていて、私たちの仲の良さを嫌がるかのように寒さが暴れている。

「何か紅茶でも買って行こうかな。久しぶりに二人で選びたい」
「なまえの淹れる紅茶は参考になるよ」
「たまにはやってくれてもいいのに」
「まだなまえには敵わないよ」

毎年バレンタインって意外と楽しい日だな、と思う。それはきっと過ごす相手が乾くんだからなのかもしれない。


prevtopnext
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -