四季折々 | ナノ

温もりと少しの下心




冬の寒さは少し苦手だ。刺さるような冷たさ、血の巡りが悪くなる手足、乾燥するお肌のための保湿。夏は夏で気を遣わないといけないが、正直冬のほうが私の面倒な気持ちを刺激するものが多い。

それでも夏にはない冬の魅力はたくさんある。冬服の乾くんは付き合う前からずっと私の心を掴んで離さない。そんな格好いい乾くんに引っ付くことに抵抗感がない季節の冬は最高だ。

「なまえは冬になるとずっと俺に熱っぽい視線を向けるよね」
「冬の乾くんが格好いいせいです。マフラーも凄く似合ってるし」
「ああ、これは毎日着けているよ。君から貰ったものだからね」

隣を歩く乾くんが巻いているマフラーはクリスマスにプレゼントしたものだ。かく言う私のマフラーも彼からのプレゼントなのだからなんとも仲の良いカップルである。

「そういえば、なんでプレゼントをマフラーにしたの?」
「なまえは冬になると毎日必ずマフラーを巻いて外出する。寒い日に君がマフラーをして来なかった日は一度もないからね」
「私のことなんでも知ってるよね」
「そりゃあ恋人だからね。それに君に大きなマフラーを巻いてみたいと思っていたから、これは少しだけ下心も含まれている」
「乾くんってマフラーに下心隠すタイプなんだね」
「君へのプレゼントにはどれも下心があるから気をつけたほうがいいかもね」
「何の忠告かよく分からないけれど、乾くんからの下心なら別に気にしないから大丈夫です」

笑いながら裸の街路樹を横切る。葉のない木々を見るのは何だか少しだけ寂しい。早く暖かくなって欲しいなと思いながら、コートのポケットに手を入れる。そろそろ温まったはずの使い捨てカイロに空気を含ませるべく振る。手のひらの中でシャカシャカと音を響かせてから両手で包み込むとじんわりと温もりが広がる。

「なまえが持っているそのカイロよりもっと温かいものがあると思うんだけれど、何か分かるかな?」
「えー、なんだろう」
「ヒント、君の隣にいます」
「乾くん?」
「なまえさん、大正解」

ポケットにカイロを入れて差し出された手を取る。寒いと人肌が恋しくなるとは言うが、カイロの温もりに比べたら乾くんの手のほうがずっと温かくて幸せな気持ちになる。マフラーも繋いだ手も、魔法のような彼の温もりで溢れている。

「そういえば今日してくれた巻き方、全然知らないものだったんだけどどこで覚えてきたの?」
「それは秘密にさせてもらえないかな」
「なんで。私も自分でやってみたい」
「なまえが自分で巻いて俺の隣を歩くのもいいけれど、可愛いなまえの一要素を作りたいから教えることは出来ないな」
「あっ下心」

何気ないところに隠された下心にこれからも気付いたり気付かなかったりするのだろうか。私のことを知り尽くした彼なら驚くところに潜ませてくるから絶対に見つけてやると意気込みそっと指を絡めた。


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