犯罪というのは立件されて始めて罪状が付く。
表沙汰にされない事件というのは闇から闇へと根を下ろし花を咲かせていく。

怪盗キッドの予告が新聞上で大々的に発表された。
今回は原文そのものが掲載されており、名前は濃い目に入れたコーヒーをちびちびとしながらそれを眺めた。
渋谷のミュージアムで展示中の『プティマリエ』と銘打たれたパパラチアサファイアがターゲットのようだ。
小さなという名称とは対照的に30カラットの大粒の輝石はオレンジからピンクへと見る角度により輝きを変えていく。
『花みたいだわ』
なんとなしに呟いてみる。
せっかくなので実物を見に行くのも良いかもしれない。
思い立ったが行動。
自由業の嬉しい特権。
好きなときに寝て好きなときに遊ぶ、これに限る。
髪の毛をとかしてクローゼットからワードローブを取り出す。
正直これがこちらの私のワードローブでもあることに若干の恐ろしさは感じた。
リリー効果で若返っていたときはリボンだのフリルだの着用していたけれど、まさかの三十路ロリィタ。
いやいや、TVではタレントが普通に着てるしオカマのオッサンが着てて自分がアウトというわけでもないはず。
若干、自分へと言い訳をしてみたが好きなものは好きなんだから着ればいいやと袖を通す。
下手に普通のOLが着るようなのを着てトラブルに巻き込まれるよりずっと良い。
目立つということはそれだけ人の視線を集める。
視線が集まるということは何か起こったときに真っ先に騒ぎになるということだ。
工藤新一が事件体質であるように苗字名前は変質者を集める誘引体質だった。
色々なファッションを試して実害が無く着ていて快適なのがロリィタだっただけでもし大人可愛いOL服が該当していたらそれを着たのかもしれない。
精神衛生上の都合によりファンシーな動物やらお菓子の柄のものはさすがに着る元気は失せたが落ち着いたクラシック調のものを好んで着ている。

車は運転が苦手なので移動は徒歩と電車、時々タクシー。
夕方になると帰宅ラッシュで混み合うので電車を使った移動は昼間のみ。
しっかりとマスクとサングラスをして出かける。
玄関の鏡に映った自分の姿・顔がアカン感じに怪しいが背に腹は変えられない。
きっと街中には同じような格好の人がうようよいるはず。
白木蓮の花がもう蕾をつけている。
引きこもりをしているとそういう変化にもことさら疎くなる。
日当たりの良い高い位置にある蕾は今にも開きそうだ。
環境整備がされた沿道にはパンジーの苗が植えられ、公園にはベビーカーをひいた新ママや春休み中の小学生がたむろっている。
江古田駅に到着するとちょうど鐘が鳴る。
足を止めてその音に耳を澄ます。
名前は改めて素敵な街だと思った。
ホグワーツ城に居たとき、一人になりたくなって時計台に上った。
見たところ管理が入っているようでドアはチェーンで施錠されている、機会があったら是非上からの眺めも見てみたいな。
むしろ時計台をメインに何か書いてみようか。
携帯を取り出して何気なく写メ。
『時計台なう!登りたい!!』
ツイッターはメモ代わり。画像と一緒に書きとめてある程度溜まったところでノートに書き写す。
一つ二つでは意味を成さないものも一ヶ月くらい溜めておけば何らかの関連やこじつけができる立派な資料になる。
何かピンと来るワードがあっても一言だけでは意味を持たせる前に忘却の彼方へと行ってしまうから。
ロリィタにサングラスとマスクを装着した怪しい人間を周囲は遠巻きにちらちらと見やる。


そういう時名前は決まって思い出す映画の台詞があった。

『みんな私がカッコいいから羨ましいのよ』byエリン・ブロコビッチ


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