しかし物語の登場人物の生まれ変わりであるなんていう異端な経験を積んだ方は誰かを愛することの素晴らしさを知ることができた。その思いというのは通う事が無くても人生にそっと輝きを添えてくれる。

『2012』
そのまんま2012年に世界が滅亡するというありきたりのストーリー。
アルマゲドン、デイアフター、ディープインパクト……人類滅亡のストーリーというのはネタが尽きないようだ。
一度見たものではあるが冬至が近いこともありリバイバルしていた。
凝りもせず映画館に足を運び3時間近い映画を見た帰り変革のときは訪れた。
『世界が変わる』という体感、自分のものとはまったく違う風貌、そして目の前に現れたもう一つの『世界』。
小さなリリーにとって彼は世界だった。
恋心を封じるための"可愛い"お呪い。
古代魔術には闇と限りなく密接に関係している呪術が存在していた。
優秀さゆえに使えた魔術と未熟さゆえに忘却した事実、二度と使わないと心に決めた古代魔術を彼女は今際の際に使った。
『ハリーだけは助けて……!』
その瞬間、可愛いお呪いは呪いとして後世へと受け継がれた。
呪いにより始点から切り離された。
リリーがその呪いをした年齢、ホグワーツ5年生の姿形で運命を切り開くための戦いに身を投じた4年間。
寂しさは無かった。友人は離れてても友人だと思っていたし何より負担となる家族が居ないことによる開放感が勝っている。
前世からバックアップされたデータもこの上なく有益で実力以上の成果が残せたと名前は心から満足していた。

始点と時点、奇しくも家族という枷から開放された時期は同じだった。

付属するようにハリーへの母性本能、セブルスへの恋情が無ければそのままあの世界に居ることも良かったのかもしれない。
しかし、呪いという代物は簡単にはいかない。
徐々にリリーであるという感覚に襲われだした。
はじめは小さな変化だった。味覚・趣味嗜好からはじまり皿に取り分ける料理の種類だったり、筆跡や言葉遣いがリリー・エヴァンスに侵食されるという事態を重く見た校長により帰還勧告がなされた。
自分が自分ではなくなる、それも悪くはない。
なんだったら自分よりリリーが居るほうがみんな幸せなんじゃないかと言った名前に対し、アルバス・ダンブルドアは自分より若い友人が自分より先に逝くことはとても悲しいと涙を零した。
老い先短い老人を不幸にするのも目覚めの悪い話。
そこで最終的に賭けに出た。
セブルス・スネイプ本人へとジャッジを委ねる事に至った。
4年という付き合いの中で憎からず思ってくれているのは分かっていた、勝算は五分五分。
最後の日に送られた言の葉は『教師として生徒を見送るのが自分の本分』というあたりさわりの無い、それでいて精一杯の好意だった。
本気で好きになれた人が見てくれた自分はリリーの生まれ変わりではなく自分そのものだったことに喜びを感じた。

『名前!幸せを願ってるから、遠く離れてても絶対に信じてるから』

残念ながら始点軸に戻ることはできなかったけど珍妙な形で利害が一致し、元通りとはいかずともこうやってのんびりとした日常ををおくれる。
あながち願いや祈りというのは馬鹿に出来ないのかもしれない。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -