時計台のある駅通りとは反対側、公団や集合住宅を抜けると都内でも有数の私有林へと繋がっていく。
子供の声が響く公園、学校周辺には近代的な戸建てが多いものの高台へと向かうにつれ昔ながらの平屋や明らかに昭和の風情を漂わせる変色したアイボリーの壁の家がまちまちに並ぶようになる。
アスファルトに覆われた道は途中で途切れ、踏み固められた砂と土の道へと続く。
何かのたて看板があるわけでもないがその薄暗い林道に寄り付くものは皆無と言えた。

何故なら徒人にはわからぬように張られた結界がそれとなしに人除けをしているからだ。
林道の奥にある屋敷は正真正銘『魔女の住む館』であり住んでいるのは現代を生きる『赤魔術』の正統な後継者。
どこまでも艶やかな黒髪、冷酷なまでの美しさを秘めた目元、妖艶に微笑む口元に多くの男が惑わされる。
普段は普通の高校生のようにセーラー服に身を包んでいるが、露出過度な真紅の衣装を纏い真剣な面持ちで水晶球に向かって何事かをブツブツと唱えている姿はまさにそれと言えた。

星に新しい動きがあった。
今にも消えてしまいそうな儚い星、低い体温で燻る焔は不死鳥のように一瞬で燃え上がり元の低い茜色へと落ち着いた。
しかし、今にも消えそうな弱弱しさは既に無くただじっとこちらの様子を伺っている。
奇妙なことだ。
何かの強い星が急に弾け飛んだり、脆くも青い焔が燃え尽きる一瞬で強烈な残像を残す様は何度も見てきた。
赤の魔女こと紅子は此れまでに無い現象に頭を悩ませる。
通常、どこでどんな星が何をしていようとも我関せずを貫いている。
見過ごせない理由はその星が白き罪人の傍らに位置してるからだ。
吉兆になるか、凶兆となるか。
ルシファーは沈黙を守り再三の問いかけにも応じない。
現象というのは既に摂理を守って存在している。
魔女の役目は摂理を理解し観測すること。
問いかけがならないならばこの出来事は世界の摂理から反していることになる。
摂理から反した者の正体、必ず突き止めてみせますわ。

高笑う魔女に合わせて鴉がギャーギャーと鳴いた。



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