おれが来ちゃった!お見舞い
ヒーロー殺し戦をした三人は念には念をと入院した。
その間俺は一人職場体験だったぜ!エンデヴァーが稽古つけてくれたぜ!ひゃはっおふぉい!
たぶん絶対俺の実力把握するためだろうけど。
脳無戦の時に何体か脳無を沈めたからな。しかもちゃんと俺が倒したという目撃者が出ないように紙袋被ったり、人に戦いを見られないように。
一応俺は勝手に個性使ったら駄目だし。ちゃんとそこんとこ考えてるよ。
けど脳無倒すのちょっと苦戦した。あいつらなんなの複数の個性があるから把握するのに手間取ったし。
それに気を見ると色……複数の気の色が見えた。
気が分かることは言えないから誰にも言っていないけど。ただ実家には報告した。事件を知った実家が情報を催促してきたから。
確実ではないけど、おそらくなある程度の予想はもうつく。
敵って怖いね。だから俺達の一族も貴重な個性として狙われる訳だし。
職場体験に行った帰りに俺は林檎を持ってクラスメイツのお見舞いに病院へ向かった。
お見舞いの品といえば林檎だろう。ちゃんと剥くように果物ナイフも持ってきたし。うん、病院ぽい。俺が可愛らしく切ってあげよう。
三人のいる病室へ向かう道中ちょうど緑谷に会ったので一緒に行くことになった。
「唐沢くんって格好いいよね」
「ん?何を当たり前のことを。どうした急に」
「いや、ヒーロー殺しの気迫にみんながたじろぐ中一人前に進み出たじゃない。あんな状況で背に庇おうと出来るなんてすごいなと思って」
さすが頭脳派という緑谷。自分はピンチだったくせにまったくよく観察している。
「いやあ、そこまで言われると鼻高々だけど。罪悪感を感じるから言うとただ俺が鈍いだけかもよ。みんながヒーロー殺しに引いてる中、俺だけクエスチョンマークだったし」
「そうなの?君はヒーロー殺しについて何か思うことはあった?」
「一応ヒーロー殺しの生い立ち的な記事は読んだけど。別にかな。ふーんとは思うけど、緑谷はどうなの?」
「うん。僕はまだ考えがまとめきれていないや。いろいろ衝撃的だったし」
「だよなー緑谷連れ去られるお姫様状態だったし。これが可愛い女の子だったら俺が颯爽と助けてラブフォーエバー的だったのにな。こほん、それに緑谷たちはみんなでヒーロー殺しと戦ったもんな。俺はちょうど良いタイミングで間に合わなかったけど、闘ってたら俺も少しは理解できたかなあ」
俺は平気で嘘を吐くけど、まだ俺がわざと遅れたことについて誰にもバレていない。
「唐沢くんは脳無の兄弟を倒すのが大変だったんでしょ。すごいよね。かなりの活躍だったらしいって轟くんから聞いたよ」
「俺は一度戦うところを見て知っていたからな。それにエンデヴァーさんとかもいたしUSJの時より弱かったし」
また嘘を吐く。強さは大差なかった。
「それでもすごいよ。唐沢くんは似てる個性を持っているからさ、君のようになりたいなって思う時がよくあるんだ」
「俺みたいに?」
「うん。だから唐沢くんが同じクラスメートで嬉しいよ」
緑谷は照れたように朗らかに言う。
「ありがとう、緑谷にそう言って貰えて俺も嬉しい!」
俺は笑いかけまた嘘を言った。
……俺みたいにね。
緑谷は良い奴だ。
だけど、心を許せないのはもしかしたら個性が似ているからなのか。
個性が似ているからこそ真逆なことに敏感になる。
ふう。最近暗いな俺。
「ところで、その林檎って?」
「ああ、お土産。お見舞いにきて林檎を剥くのって定番だろ。だから剥いてあげるよ」
「えっと。ありが、とう?」
「どういたしまして!」
俺は笑顔で緑谷のお礼に返した。