おれが来ちゃった!道草
俺と焦凍はエンデヴァーヒーロー事務所から一緒に帰ることになった。まあ俺が無理やり誘っただけだけど。
そして今、俺達は駅前にいる。
「さて、どこ行くか」
「帰るのが良いんじゃねえのか」
「いやいやいや、一緒に道草食って帰るの良いって言ってくれたじゃん。後で手合わせするって約束で!」
「……お前が誘ったんだからそれくらい考えておけ」
「だってだって。俺こういう風に普通に友達と遊びに行ったこと常闇としかないし。常闇も遊びの付き合いあまりよくないからつまりほとんどないし。焦凍は道草の食い方知らない?」
「知るか」
焦凍ははっきりと否定した。
……まじかよ。焦凍も知らないとか。
俺達初めての道草状態?
俺は道を歩きながら辺りを見渡して、大きな音楽が漏れてくる建物に気が付いた。これは…
「よし、焦凍一緒にゲームセンターに行こう」
「ゲームセンター?」
「えっ入ったことない?」
「ねえよ」
「わあ、俺もだよ。でも高校生はこういうところで遊ぶらしいよ。プリントクラブってプリクラして写真を撮るんだって。入ってみよ」
うろ覚えな情報を伝えて俺が誘うと焦凍はとりあえず頷いてくれた。
しかし、焦凍は緑谷と仲良くなってから丸くなったよな。前の焦凍なら絶対ついて来てくれなかったもん。
ゲームセンターに入るとさっそくクレーンゲームがお出迎えしてくれた。たくさんの機械がある。うわあ。
「よし、このクレーンゲームやってみよう!あの猫のぬいぐるみ可愛い」
「そうか?顔潰れてるじゃねえか」
「そこが可愛いじゃん」
ぬいぐるみ達の後ろにある説明によると踏みにゃんという踏み猫系キャラクターらしい手のひらサイズのぬいぐるみだ。
俺は小銭をチャリンと入れて操作する。
「クレーンゲームやったことあるのか」
「ゲームセンターに来たこともないからないよ。けど、横と縦にクレーンを動かせば良いんだろ。俺空間把握は得意だし余裕だよ」
ふふふっ血反吐を吐くまで修行させられたのはこの踏みにゃんを取るためだったのですね、姉上!
これは勝つると自信満々にクレーンを動かしグレーの踏みにゃんに足を引っ掛けた。
スカッ
「………」
「………」
えっ、クレーン掴みもしなかったんだけど。
「ちょっ、クレーンの握力弱くね、詐欺じゃね」
「こんなの取れねえだろ」
「だよね。うわああ悔しい」
絶対取れると思ったのに俺の踏みにゃん。
他のクレーンゲームをやっている人を見れば握力が弱いのは俺の機械だけではないらしい。えっ、なにこれ騙された。
「くっ、仕方がない。他のゲームしよ……あっ、ちょっとごめん焦凍、俺行ってくる」
俺は焦凍に軽く断りを入れてから、プリクラの方へ一人向かった。
そこには制服姿の女の子二人が二人組の不良ぽい男に絡まれていた。
ナンパだろう。無理やりの。
ここは正義のヒーロー俺がただいま参上する流れですね。
「ちょっとお兄さんたち、この子たち困っているじゃん。やめなよ」
「ああん?」
「なんだてめえやるのか」
無理やり誘うのは駄目だぞっと注意すると、不良は腹を立てた様子で俺にメンチを切ってくる。あれ、ミンチ……メンチであってるよな。
公共の場では個性を使ったらだめなのになんか手の内をビリビリして脅してくるよふぇぇ。上鳴と似た個性か。上鳴より弱いけど。
「個性で脅してくるとこ悪いけど。俺一応雄英の生徒だから、戦いなら個性使わなくても勝てるし。それでもやる?」
「はあ?なるほど。優等生の僕ちゃんならこんなところで個性なんて使えねぇもんな。その鼻へし折ってやろうか」
「そうか。なら自己防衛でやることになるけど
それでも良いんだな?」
俺は声をわざと低くして二人を睨み個性である気道の一つ“殺気”を彼らだけに向けてこっそりと放った。
すると二人は真っ青に青ざめた。今彼らは蛇に睨まれた蛙のような状態だろう。
「おっ、覚えておけよ!」
「くそっ」
実力の差を察した二人はそう捨て台詞を残して逃げて行った。
ふふん、喧嘩を売るなら人を選びたまえ!
「あの、ありがとうございました」
女の子がおずおずとお礼を言ってくる。
「いや男として当然のことをしただけだよ。無事で良かった」
イケメンな感じに言って微笑むと、二人は頬を染めた。
「あ、あの。お二人はこれから時間ありますか。良ければお礼をさせてください」
女の子は俺達を見て、頬を染めながら言った。
焦凍は揉めている間俺の後ろで見守っていたことを俺は振り返らずとも気配で知っていた。
だから俺は数歩下がって、焦凍の肩を組んで言った。……腕はすぐに振り払われたけど。
「いや大丈夫。俺達今日は二人で遊ぶ予定だから。あっ、お礼ならさ君たちって遊ぶ時ってここらへんでどこで遊ぶ?」
「遊ぶ場所ですか。それならカラオケとか」
「映画とかスターズのショッピングモールでショッピングとか」
「あっ、何か好みがあれば美味しいお店教えますよ」
「まじで、ありがとう」
俺が二人にお礼を言うと、焦凍は睨みつけてきた。
「おい、俺はあまり遅くまで遊べねえぞ」
「うん。だからまだ職場体験は続くし次に一緒に遊ぶ用に知ってた方がいいじゃん」
「……また遊ぶのか」
「うん、遊びたい!でも嫌なら俺諦めるよ。焦凍に嫌われたくないし。今日ももしかして嫌だったか」
なんかだんだんと自信を無くして声が小さくなっていくと、焦凍はフイっと顔を逸らした。
「別に。ただその分手合わせしろよ」
「うん!」
また遊んでくれると焦凍から許可を貰った!条件付きだけど、嬉しい。
焦凍と仲良くなれるといいな。
俺達は女の子たちに遊ぶ場所を教わって別れた。
それから焦凍と少し話をしながら街をブラブラして別れた。
明日はエンデヴァーがヒーロー殺しを追うために保須市に行くことになっている。
もしかしたら戦うことになるかもしれないから、家に帰ったら情報集めておこう。