おれが来ちゃった!体育祭8
一人。
俺は一人なのか
俺はこの学校に来て友達ができた。
けど、それなのに、俺は中学校の時よりも寂しさを感じていた。
一人。
なるほど。だから寂しかったのか。
外に出て知れば知るほど俺は特殊だと思い知らされた。
一人なのだ。俺は。結局、求めようとも。
後半の試合は俺は静かに観戦した。
観るのも億劫だったけど、情報は集めておいて損はないだろう。いや集めなければならない。もしものために。
結果は爆豪、轟、常闇飯田の順で決着が付いた。
まあ順当だろう。
試合観戦はイライラした。
無駄な動き、無駄な信念、見ていて嫌になった。
いやその甘さが学になるのか。完璧なんてありえない。隙を付くには甘さを利用するのも一つの手か。
ああ、姉と会ったせいでこんな性格の悪いことを考えてしまう。
いや会わなくても元々俺は根では考えていたか。
どちらにしてもそんな俺を悟られる訳にはいかない。
「常闇!お疲れ様っ」
「唐沢」
俺はいつも通りに常闇を迎えに行った。
ちょうど競技場から出てきた常闇に抱きつこうとするとあっさり顔に手を突っぱねられ防がれた。
「ここは友情の熱い抱擁ってとこだろ!」
「そんなルールは知らん」
うむ。
常闇つれない。
「なんだよう。でも三位おめでとう。体育祭が夜だったらもっと面白い結果になっただろうけど。昼限られた場所で戦うなんて不利な状況で三位なんてすごいよな。そんな常闇が俺の超友達で嬉しい」
「唐沢」
「ん、なんだよ常闇」
常闇は笑顔でトークする俺を真面目な顔で見つめる。
「これから体育祭の打ち上げをクラスでするらしいが」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたね」
俺も誘われた。まだ返事はしていなかったけど。
けど、さすがに行く気にはならないから俺は断ろうと思う。
「常闇は行くの」
「いや」
常闇は首を横に振った。
「今は甘い物が食べたい。前話していただろう。唐沢が行きたがっていたホットケーキ屋に連れて行ってくれないか」
「え?」
「もしも唐沢が打ち上げに参加したいのなら断ってくれて構わない」
常闇の言葉に俺は思わず笑顔を作ることを忘れた。
なんだろう。
泣きたい。泣かないけど。
思わず俺は常闇を抱きしめた。今度は常闇は拒否しなかった。
鍛えているけど細身の常闇の体を抱きしめる。
「ありがとう、常闇」
「そんなにその店に行きたかったのか」
「うん。そうみたいだ」
そんな訳がないと常闇は気づいているだろうに、常闇はポンポンと俺の頭を撫でた。
「俺、常闇に会えて良かった」
あんなに重かった心が変わるなんて。
俺は変えられているのか。
それでも常闇なら緑谷の時と比べて怖くは無かった。