おれが来ちゃった!体育祭7

 俺はベスト4を決める戦いの前に席を立った。

 常闇も試合の準備でいないし、一人考え事をしたかったのだ。
 俺はスタンドの階段を下りてバックヤードに行こうとした。


 「あら、こんなところにいたのね」


 俺はその声に思わず体を震わせてしまった。

 会場にいるとは思っていたけど、それは俺の姉で家の現当主だった。
 美しく妖艶な彼女は背後に一族数人を後ろに従え、俺へ歩み寄ってきた。

 「姉様、久しぶりです」

 「ふふっ、本当ね。会いたかったわ。家から出るときにずいぶんお痛をしたらしいじゃない。怪我はなかった?」

 「はい」

 「そう。良かったわ」

 姉は優しく微笑み言った。
 同じ姉弟だからこそ分かる。胡散臭い。
 だいたい家を出るとき俺が倒した奴らから俺が無傷なのは聞いているだろう。

 「なら貴方の顔も見たから私はもう用事は終わったわ。冬樹、学校がんばりなさいね」

 「連れ戻さないんですか?」

 「あら、弟が決めた道ですもの。私は否定するつもりはないわ」

 姉は微笑み、言葉を続けた。

 「だって分かったでしょう。結局貴方は一人なんですもの。帰ってきたくなったらいつでも待っているからね。愛しい私の弟」

 姉は聖母のように優しく言うくせに、言葉は冷たく酷たらしく俺の胸を突き刺した。






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