おれが来ちゃった3

「唐沢。どうしたんだ、その怪我は」

昨日下校中に轟と話をして、死闘となった次の日冬樹は包帯を巻いて登校した。
怪我は凍傷や擦り傷だったので治してもらおうと思えば治してもらえたが、面倒くさいのでそのまま家に帰り、自分で手当をしたのだ。
だがそんな冬樹はやはり目立ち、教室へ入るとすぐに冬樹いわくマブダチである常闇が心配そうに声をかけてきた。

常闇と冬樹は入学当初からの仲である。
教室へ入るところを冬樹から不躾に話かけられたことから関係は続いているのだが、それでも常闇はまだ冬樹を把握しきれてはいなかった。
だが、それでも他のクラスメイトと比べれば彼のことは理解していると常闇は思っている。

「ふっふっふ、常闇よ怪我は男の勲章だよ」

「ずいぶんやられたな。どうせおまえが何か仕掛けたんだろうが、轟と何があった?」

「お、おう」

なにやら偉そうに言ってくる冬樹を無視して常闇はあっさりと包帯の隙間から見える凍傷からこれが轟との怪我であると察した。
さすがはものの判断にすぐれている常闇である。
思わず冬樹はたじろいでいたが、すぐに気を取り戻して馬鹿みたいに胸を張った。

「何があったって。うーん。何があったんだろう。俺的には普通のおしゃべりだったけど。でも俺は楽しかったよ」

「楽しかった?そんな怪我でか」

「うん、訓練以外のサシの戦いってこっち来て久しぶりだったからね。やっぱ轟ちょう強い!!あっ、それより放課後あいてる?おいしいパンケーキの店ができたらしいんだけど一緒に「一人でいけ」・・・うぇーい」

間髪入れずに常闇に断られて落ち込んだ様子の冬樹は肩を落として悲しそうな顔をしたが、いちいち気にして構っていては躾によくないだろうと常闇は目を細めた。

冬樹はどうやらあまり一般常識的な教育を受けてきてはいないようで、精神年齢、特に人とのコミュニケーションの取り方は実年齢より遙かに幼いと常闇は思っている。
だから言っていいことと悪いことの境界があいまいなので、きっと轟にも何か勘にさわるようなことを言ったのだろうと常闇は予想し、それは当たっていた。

常闇は息を吐いてチラリとすでに教室にいた轟を見ると、轟はすぐに顔を逸らし不機嫌そうに外を見ていた。






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