おれが来ちゃった!体育祭6

 「皆…本気でやってる。勝って…目標に近づく為に…っ。一番になる為に!」

 轟と緑谷の試合。
 俺は常闇の隣で試合を観戦していたけど、そこで半分の能力しか使わない轟に緑谷が叫んだ。


 ……なんか、ごめん。


 いや、俺だってある程度は本気でやったよ。いや嘘だけど。全然本気出してなかった。
 けど、本気でやるわけにはいかなかったし。

 ……ていうか本気でやる方のもどうかと思うし。
 こんな大衆の中、自分の個性を披露するって。手の内晒して勝てるほどだと敵を舐めているのか。
 まだ観衆が企業だけならいい。一般人も見られるようにしているなんてなんの為の学校セキュリティーだ。
 それともこの学校はそれを狙いにしているのかと疑ってしまう。
 まあ、裏無くただの名売りが目的なだけかな。ヒーローは結局人気商売だものな。
 ヒーロー……ね。職業である以上宿命か。


 ……なんて真面目モードで思わず考えちゃったじゃない。
 もう俺のキャラじゃないね☆


 さて、と。そんな二人の戦いを俺は見守る。
 普通に考えれば轟が勝つだろうけど、なんか緑谷って漫画の主人公ぽいからどんでん返しとかありそうだよね。
 どうなるかなあ。轟勝てーと心の中で応援する。




 結果、轟は散々使わないと言っていた炎を使って緑谷に勝った。それには驚いた。
 緑谷が轟の何かを変えたのだろうか。


 ……見なければ良かった。


 久しぶりに、怖いと感じた。

 人を変える緑谷が怖い。


 「唐沢、唐沢!」


 俺は隣で自分の名前が呼ばれていることに気が付いて、俺の名前を呼んだ常闇を見た。


 「なんだよ、常闇」

 「いや。顔色が悪いが大丈夫か?」


 常闇は心配そうに俺を見ていた。
 そんな分かりやすかったのか。動揺し過ぎだ。


 「大丈夫だって。ただ二人ともすごいな。本当に派手な戦いだったから体が震えたよ。常闇もすごかったと思わね?」

 「……確かに良い試合だったが。唐沢本当に大丈夫か」

 「常闇がいるから大丈夫だよ」


 俺の言葉に常闇は首を傾げたので、俺は笑顔を向ける。

 名前を呼んでくれる友達がいてくれて有り難かった。

 俺は大丈夫だ。うん。






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