ワン!勉強編

あんまりな出会い方であったにもかかわらず中学生になるころには冬樹は緑谷や爆豪との交流を深めていた。

昔の自分が見たら爆豪と仲良くなっていることに驚いただろう。

だがやはり家が近いので必然的に出会うことになるし。
それに加えあの後、爆豪は昔冬樹が年長組に絡まれて泣いているところを助けてくれたのだ。
いじめっ子たちを追い払った爆豪にその後、「俺以外に泣かされてんじゃねェよ!この泣き虫がぁ!!」と怒鳴られ更に泣かされたが冬樹はそれ以来、前ほど爆豪が怖くなくなっていた。
なんだかんだ爆豪は手の中は爆発させるが冬樹へ暴力をふるってくることはもうあまりない。
・・・全くということではないのが困ることだが。




中学時代のある日冬樹は爆豪と冬樹の家でお勉強しようと約束をしていた。
中学に進学してからはお互い雄英を目指しているのでそのための勉強をよく爆豪と一緒にしている。

冬樹は本当は普通の進学校に行こう考えていたが、爆豪に「雄英にしねェなら殺す!!」と脅はk・・・誘われたので目指すことにしたのだ。
ほとんど脅しのようなそれではあったが、誘われたことに嫌な気などしなかったし。それに緑谷には内緒と言われているので爆豪には言っていないが、緑谷も目指していると知って冬樹はがんばってみようと思っている。

家に来た爆豪は冬樹の部屋へと案内されるまでもなく先行して入っていった。
もうおそらく三桁になるのではと思うほどに招いているので勝手知ったる人の部屋である。

冬樹はお茶を用意して、部屋の真ん中にある硝子テーブルへと置きいつものようにすでに座っている爆豪の向かいに座り自分の教科書を広げ、いつものように勉強を始めた。




「おい」

しばらく黙々と勉強を進めていると、突然爆豪から声をかけられて冬樹は顔を上げた。
テーブルを挟み向かいにいる爆豪は横にある普段使っている勉強机をにらむようにして見ている。

どうかしたのかな?

と思い首を傾げると爆豪は眉間に皺を寄せて目を吊り上げペン入れに刺さっているオールマイトがプリントされたシャープペンシルをビシっと指さした。

「なんでデクのシャーペンがそこにあんだよ」

「え?なんで緑谷くんのだって分かったの?」

「I・Mってイニシャルが書いてあるだろうが」

確かにペン先にはイニシャルが入っていたが、それだけで特定するとはさすがである。
冬樹はそのとおり緑谷のシャープペンシルだったので隠すほどのことではないと頷いて答えた。

「そうだよ。緑谷くんが遊びに来たときに忘れていったんだ」

「あ″あ″!?」

答えた言葉はドスの効いた声で打ち返され、冬樹は思わずふさふさの獣耳を下げて怯んだ。
声を上げるのは我慢できたとはいえなかなか慣れることはない。

「あいつも来たのか」

「う、うん。たまに遊びに来るよ」

「どのくらいの頻度だ」

「えっと。爆豪くんよりは少ないけど月に1、2回くらいかな」

とはいえ、冬樹はどちらかというと緑谷の家に遊びにいくのが主だったのだが。
それは言わないほうが良さそうだと思ったので冬樹は口を噤んだ。

「チッ、デクのやろうが」

爆豪はいらいらとした様子で冬樹を睨むと手を伸ばし、冬樹の左の獣耳を思い切り掴んだ。

「きゃん!」

いきなりのことに冬樹は鳴き声を上げるが爆豪はお構いなしに冬樹の耳をぎゅうぎゅうと引っ張る。

「いつまで耳下げてんだ、クソ犬が」

「ば、爆豪くん。いたいよ。離して」

「うるせえ、黙れ」


なぜか不機嫌な爆豪に耳を捕まれながら理不尽さは相変わらずだと冬樹は思ったが。
耳を掴むと爆豪は少しだけ怒りが薄れたような顔をするので、冬樹は痛いのを我慢して大人しく気が済むまで爆豪に掴まれていることにした。






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