ワン!ふぉーおーる

※オリキャラ出ます

冬樹は私立なため爆豪や緑谷と学校は違うが家は歩いて行けるほどのそう遠くない場所に住む、中性的な顔立ちの小柄な少年だった。

彼の個性は“狼”である。
そのため頭にはふさふさの耳があり、お尻には普段は長めのシャツで軽く隠されているがふさふさの尻尾もある。

そんな冬樹と縛豪の出会いは小学生のころ公園の砂場で冬樹が1人山を作って遊んでいたときのことである。
あと少しで完成なところを爆豪が来て、突然冬樹が作っていた砂の山を爆発されたことにより交流は始まった。

がんばって作っていた山を壊された冬樹ははじめは何があったか分からずに爆豪とその後ろにいる二人の取り巻きを目を見開き見て、次第に目を潤ませると大泣きした。
冬樹はとても泣き虫であった。
わんわん泣く冬樹だったが、爆豪は理不尽にも眉間に皺がすごいことになりながら「うるせえ!!!」と怒鳴り冬樹の頭を叩いた。

それにより冬樹はさらにわんわん泣いて家へと尻尾を巻いて逃げ帰った。

冬樹にとって爆豪の第一印象は怖い人だった。
もう会いたくないと、冬樹はそれからその公園へ行くことを止めた。


それなのに。

ある日図書館へ行くために歩いていると冬樹はあの怖い人、爆豪と道すがら会うことになった。
今日は爆豪は1人で歩いている。

冬樹は怖くてビクリと歩みを止めると爆豪は冬樹に気がつき「よお、泣き虫女」と話しかけてきたので冬樹の目にはまた涙が浮かんだ。

違う。
俺は女じゃないと返事をしたかった。

確かに冬樹は人の弱そうな中性的な顔つきでよく女に間違えられていたが、男なのだから女に間違われてうれしくはなかった。


「返事ぐらいしやがれ、泣き虫」

「いぐっ」

「ああ゛?また泣くのかよ」

言葉を発したくても、声は喉元で詰まってしまい声にならない。
冬樹はホロホロと涙を流す。

また逃げてしまいたかった。内心に合わせるように尻尾がきゅっと丸まる。

そんな冬樹の様子に爆豪はいらだったらしく、手のひらの中を爆発させた。


「泣いてばかりいるんじゃねえ!!俺は泣く女は嫌ェだ!!」


だから女じゃないのに。
そんなに嫌いなら構わないでほしいのに。
思っても冬樹は怖くて声に出せない。

「かっちゃん!!」

「ああ゛!!?」

冬樹が泣いていると爆豪の後ろから癖のある緑がかった髪の男の子が爆豪の名前を呼び現れた。

それに爆豪は思い切り不機嫌そうに後ろを振り返り、爆豪の形相に癖毛の彼は一瞬怯んだが冬樹をすぐに心配そうに見つめる。

「女の子を泣かせたらだめだろ!」

「うるっせえ、デク!!俺に指図するんじゃねえ!!!」

爆豪は自分に口出ししてきたデク、緑谷へと吠えた。

そんな様子に呆気にとられた冬樹だったがすぐに庇ってくれたのは嬉しいけど俺は女の子じゃなのにと思った。
もう一人の方も勘違いしている。
思ったが声には出せなかったが。

緑谷は爆豪の怒声に口を結ぶと爆豪の横をすぎて泣いている冬樹へと近寄ってきたので冬樹は思わず体を固くした。

「だいじょうぶ?」

冬樹へ心配して声をかける緑谷に冬樹はより涙を酷くする。

緑谷の優しさが嬉しかったのと同時に女と勘違いさせていることにどうしようもないいたたまれなさを感じたのだ。
男だと気づいたらイヤになるかなとそれも怖かった。

「だいじょうぶ・・・です。ありがとう」

「(女の子としゃべった!?)・・・うん。なら良かった。かっちゃん、女の子をいじめたらだめだよ」

目を赤く腫らしながらも冬樹にお礼を言われ安心したように緑谷が微笑むと、爆豪へ思い出したように恐々と注意した。
その様子で冬樹は二人の順位関係を察した。
緑谷は怖いのに冬樹を守ってくれたのだと冬樹は気がついた。

「うるせェ!!デク!!てめえが俺に口答えなんてんなことがよくできるな!!!ぶっ殺してやろうかァ!!!」

「ひっっ」

だが爆豪のいらだちはそれでピークに達したらしい。
緑谷へ怒鳴ると、緑谷ばひきつった声をもらした。

これでは助けてもらった人を巻き込んでしまう。
冬樹は慌てた。

「あ、あの。ごめんなさい。かっちゃんさん。デクさんも大丈夫です。もう、すぐにでも帰りますので。ごめんなさい」

「うるせェっ!!泣き虫女!!」

「きうっ!?」

冬樹はどうにか許してもらいたくて謝ってみたけれど一刀両断である。
冬樹は思わず子犬のような悲鳴を上げた。怖い、かっちゃんさん、怖い。

いままでいじめられることはあっても、ここまで殺意を向けてくる人なんていなかったから冬樹は長いシャツの下にある尻尾をより丸めた。

もうにげよう。


そう弱気な決意を内心するとともにきびすを返そうとしたが。

その前に今度は冬樹の後ろから冬樹が知った声がかかった。


「なんだ?冬樹、おまえこんなところで図書館にでも行くのか?」

振り返るとそこにはいかにもまじめですといった眼鏡に短い黒髪の少年が立っていた。
雄英ほどではないが近くのレベルの高い進学校である高等学校の学ランを着た彼は冬樹の近所に住むよく遊んでくれるやさしいお兄さんであった。

そんな大好きな兄の登場で冬樹は今まで泣いていた顔を破顔させた。
思わずしっぽも揺れる。

「お兄ちゃん!!」

「やあ。また図書館に勉強に行くのか?それなら俺も図書館に行くところだから一緒に行くか?」

「うんっ!行く」

「じゃあ行くか。ところでこの2人はおまえの友達?」

冬樹はなにをしていたのか半分忘れ兄と尻尾をパタパタと振って話していると、兄から不思議そうに2人を指さして尋ねられた。

「友達?」

「んなわけねえだろ!!」

「ちょっと、かっちゃん」

兄さんに友達かと尋ねられて、2人がどういった関係と説明したらいいのか困って冬樹は首を傾げて2人を見ると、爆豪はカッと爆発した。
そんな彼を緑谷が止める。


「そうか、違うのか。じゃあ行くか、唐沢」

「え?うん。あっ、待って。お兄ちゃん」

冬樹は興味を無くしたように歩きはじめようとする兄を制して、ぱたぱたと緑谷に近寄る。
そして服のポケットへと手を入れてから何かを取りだし緑谷の手を取りそれを乗せた。
それは可愛らしいあめ玉の入った包みだった。

「あの、ありがとうね。デクさん。これおいしいからお礼。食べて」

「え?いいの?」

「うん!!あのかっちゃんさんは「んなのいらねえよ!!」はい、ごめんなさい」

女の子からお菓子をもらうのが初めてだったので真っ赤になって受け取る緑谷に冬樹は可愛らしく微笑んだ。
それから緑谷だけにあげるのは悪いかと爆豪へと尋ねると間髪入れずに拒否され、冬樹は思わず謝る。

だが怯んでしまったが、これだけは言っておかなければならないと思い冬樹は付け加えた。

「あとね。俺は女の子じゃなくて、男の子だよ!唐沢冬樹というの。じゃあ、またね!!」

女の子と勘違いしていたので、続けられた冬樹の言葉を聞いた緑谷は時が止まったように顔がひきつり止まった。
それは後ろにいた爆豪も同様であった。

そんな緑谷たちの様子に気づかないようで手を振り、冬樹は兄とともに去っていった。




実はこのとき2人の少年の初恋が崩れたのは恋した本人たち以外誰も気がつかないことであった。






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