おれが来ちゃった!体育祭3
第二競技が終わってから冬樹は騎馬を解いてすぐ常闇の元にダッシュで行った。
まるでよしを言われた犬のように駆け寄ってきた冬樹へ常闇も視線を向ける。
「常闇〜、俺爆豪に爆発されるかと思ったぁ〜っ。超怖かったし」
「唐沢も次の競技に進んだようだな」
「うん!めっちゃがんばったよ、俺っ。常闇も見ていたけどすごく活躍していたね。おめでとう!」
キラキラと目を輝かせて言うと冬樹の頭を常闇は無言で頭撫でてくれた。
なので冬樹は嬉しくて「わーい、常闇めっちゃオカン!」と笑顔で言う。
すると常闇は撫でていた手を止めると、何故か冬樹は横っ腹を蹴られた。
「うぎゃっ!」
普段どんな失言をしようと鍛錬以外では暴力は振るわない常闇からの初めての暴力だったので。
冬樹はクエスチョンマークを浮かべ軽くではあったが蹴られた反動でタタラを踏んでから常闇をみると。
常闇は腕を組み冬樹に鋭い視線を向ける。
「俺は唐沢、おまえの母親じゃない」
「うえ?ごめん。常闇は俺のお母さんじゃないってちゃんと分かってるよ!俺の親友でマブダチで心の友だもんね!」
「・・・」
「え?返事なし?」
常闇へ敬礼しながら笑顔でマブダチ宣言をするが、常闇からの返事はなく。
冬樹は戸惑った様子でわたわたと常闇へ詰め寄った。
「え。常闇、俺は仮の仮に常闇が俺のことを大親友だと思っていなくても勝手に俺が思っているから!泣かないんだからな、グスっ。どごやみいいい!!!どもだちーー!!」
「鼻水垂らしながら抱きつくな!!?」
友達だと思われていなかったのかと思うと悲しくなり、冬樹が感極まって涙やら鼻水やらを流しながら常闇に抱きつこうとすると常闇に顔を両手で捕まれてそれを阻止され怒られた。
「だって、常闇が俺となんか友達じゃないって言うから!」
「そんなこと一言も言っていない。友達だと思っているから濡れた顔を近づけるな」
「常闇ーーーー!」
それでもやはり今度は嬉しさに感極まって抱きついて来ようとした冬樹を常闇は黒影を使いその場に沈めた。
こうして次の競技でチーム組むってことになった時の為に冬樹は常闇にくっついていると次の競技が発表された。
第三競技はサシの対人戦だ。
もうなんかこれ体育祭じゃなくて天下一武道会だよねと冬樹は思った。
冬樹の一人目の対戦相手は黒羽だ。
「俺の世界狭いい」と思わず冬樹は呟くと常闇は一瞥したが何も言わなかった。
なんだかんだ、冬樹はつい楽しくて騎馬戦はがんばってしまった。
また貧血のおかげで難易度がいい感じでよかったのが良かったのと貧血で頭が普段より回らなかったせいだと誰に聞かせる訳でもないのにとりあえず言い訳をしておく。
とりあえず携帯の着信音は鳴らないのでたぶん大丈夫なのだろう。
「うーん。最後パン食い競争とかが良かったなあ」
「企業への披露向けではないだろう」
「そうかな。じゃあ借り物競走とか。カードに親友とか書かれてたら常闇のところに俺ダッシュするからね!」
「・・・」
「あれ?無言」
本日二度目の「返事がない、まるで屍のようだ」である。
冬樹の言葉に常闇は何やら眉を寄せた。
そういえば常闇の顔色とか分からないから何考えているのか分かりづらいなと冬樹は思ったが口には出さなかった。
最近は轟のことから学んであまり思っていることを口に出しすぎないよう、冬樹は思い出したら気をつけるようにしている。
はじめのころと比べると冬樹は変人ではあるが馬鹿ではないので、これでもだいぶ対人スキルを上げてきていた。
「唐沢は黒羽のところではなくていいのか?」
「はえ?」
「いや、いい」
冬樹は不思議に思って常闇に首を傾げると常闇は顔を逸らした。
黒羽かあ。
「俺は常闇の方がいいな」
黒羽にあまり借りを作りすぎると血液求められたりするのと、走るスピードは常闇の方があるって打算的な意味もあるが。
例え黒羽のほうが優れている条件だとしても常闇の元に行きたいと冬樹は思っている。
冬樹の返事に常闇は目を見開き「・・・そうか。ありがとう」と言った。
なんでお礼を言うのかなと冬樹は思ったけど、お礼を言うってことはたぶん喜んでくれたのだと思い冬樹は笑顔を常闇に向ける。
なんだか照れくさかった。
それから常闇と別れて競技前にトイレに行く途中、冬樹は轟に会った。
なんかすごく険しい顔をしていたので、「あんま眉間に皺寄せていると戻らなくなっちゃうぞ☆」と笑顔で声を掛けたらヒエヒエしてきた。
夏場にちょうどいいですよね。
あれ、まだ夏ではないか?
「俺に話しかけるんじゃねえよ」
「えー。そんな、俺たちの仲じゃないか」
「・・・今はおまえとふざけている暇はねえ」
どうやら本当にムラムラ・・・間違えたムカムカしているらしい。
何があったのだろう。
と冬樹は心配ではあったけど、なかなか轟と仲良くなれなていないので聞いても話してくれないだろうし。トイレにも行きたかったから聞くのはやめた。
トイレに行くという目的がなかったら話してくれなかろうが聞いていただろうが。
「分かった。じゃあ後で俺とおしゃべりしような。次の競技がんばっ。轟のことちょう俺応援するから!」
と言葉を掛けて、冬樹はトイレへと急いだ。