絡めて絡めて
ある日の校内で俺は運良く誰もいない廊下を歩くオールマイト先生を見つけたので、こっそりと俺は糸を巡らしオールマイト先生を捕獲しました。
あっ、ちなみに俺は“蜘蛛”の個性です。
特技は糸を使った捕縛です。
オールマイト先生の鍛え上げられた体に糸を巻き付けて逃げられないようにしますと、先生はすぐに俺の仕業だと気がついて振り向いて余裕そうに「また君かい。唐沢少年!」と笑いました。
まあ、先生ならやろうとすれば俺の糸なんてすぐに切れちゃうんでしょうからね。
「オールマイト先生。ご機嫌うるわしゅう。今日もお会いできて嬉しいです」
「私も会えたことは嬉しいぞ!だが、ダメじゃないか。こんな悪さをしたら」
「だって大好きなオールマイト先生を見つけたらつい捕獲したくなっちゃったんです。ねえ先生、ごめんなさい」
「謝ればよしっ!と言いたいところだがこんなことをしてはいけないだろう。君は他の子にもこんなことをしているのかい?」
「やだな。そんな浮気性みたいに言わないでくださいよ。俺が好き好んでこんなことをするのは先生だけです」
テレビ画面ではじめて観たときから俺は先生のことが好きでした。
だから俺は雄英を目指して、ヒーローになってオールマイト先生の近くに行きたかったのですが。まさか雄英で先生としているなんて思いもしませんでした。
とても嬉しい偶然です。
蜘蛛の思考なのでしょうか。オールマイト先生を本当なら糸で巻き付けて逃がしたくありませんが。今は人目がないとはいえここは学校で俺と彼は生徒と先生です。
仕方がないので俺はオールマイト先生の前まで行き、自分で先生に巻き付けた蜘蛛の糸に歯を当てます。
「先生、じっとしていて下さいね」
そう断ってから俺は糸を少しづつ噛み切っていきます。ああ、もったいないです。
思わず動作もゆっくりになり、必要ないのにオールマイト先生へと体を寄せます。
「唐沢少年、あまり遊ぶんじゃない」
「ふぁい?」
「こら、息をかけるな」
糸を口に加えたままオールマイト先生を見上げますと、先生の顔は真っ赤になっていました。
嫌なら個性を使って糸を引きちぎればいいのに。
これは同情でしょうか、それとも先生も俺を気にしてくれているのでしょうか。
どちらだろうと俺はそれを利用するつもりですが。
逃げようとはしない先生が俺はやはり大好きで、先生の体により深くすり寄りました。