おれが来ちゃった!4

「なあなあ、轟ちょっといい?」

「・・・なんだ、唐沢」

一限目の授業が終わった後。冬樹は席についている轟の前まで行って膝をついて轟を見上げ話しかけた。
すると轟は冷たい目を冬樹に向けて返事をする。
返事はしてくれたが。それは視線だけで人を殺せそうな、とても不機嫌そうな様子である。

「あのさー、昨日言ったことごめんね。あのときは考えなかったけど、轟は俺の言ったことに嫌な思いしたんでしょ?」

常闇と話をして、もしかしたら自分は轟に嫌なことをしたんじゃないかと気がついて冬樹は轟に謝ることにしたのだ。
普通なら怒らせることなどすぐに分かって当然のことだが、冬樹は単純に轟と話したかっただけであった。
だから何も考えずに昨日は話していたのだが常闇に言われあらためて見てみれば轟がすごく怒っている。
冬樹は別に嫌われたいわけではなかったので、それが自分勝手でも仲違いはしたくはなかった。

「別に謝らなくていい」

「俺はさ。普段めっちゃクールな轟が感情露わにして俺と喧嘩しくれて嬉しかったんだよ。でも怒ったってことは俺のこと嫌いになったってことだよな。俺は轟と仲良くなりたいから嫌いになられるのは嫌だから。どうしたら許してくれる?」

「・・・俺はてめえと仲良くなる気はねえよ」

怒気をふんだんに含んだ声色で轟は冬樹へ言った。

何が仲良くなりたいだ。寝言は寝て言えと轟は思う。どう見ても冬樹の軽薄な様子はただ自分をからかっているだけとしか思えない。
それに確かに冬樹へ腹を立てていたのも一つの理由だったが、轟は誰とも仲良くするつもりなどなかった。

そんな余裕などなかった。

「ううっ。謝ってもだめ?轟が嫌だと思うことは、・・・言っちゃうかもしれないけど言わないように気をつけるから」

「何を言われようがどうでもいい。何度も言わせるな俺は誰かと仲良し子よしするつもりはねえ」

「・・・」

そう冷たく言うと冬樹は口を噤んだ。
これであきらめるかと轟は思い、少しだけ罪悪感を覚えながらもフンっと轟が鼻を鳴らすと冬樹は少ししてから「あれ?」と首を傾げた。

「誰かと仲良し子よしをするつもりはないって複数形の話は俺は初めて聞いたよ。何度も言ってないよ?」

「・・・あげ足を取るんじゃねえ!!」

余計なことを言ってくる冬樹に轟は目をカッと開き、思わず怒鳴った声は教室中に響いた。

嫌だと思うことは言わないようにすると言った矢先にこれだ。

教室中に響いた轟の声に教室にいるクラスメイトは感情的になる轟に何事かと驚いて見たので、珍しいという視線が二人の元へと注がれる。
そしてその視線は冬樹へと向けられみんなが納得した顔をしていた。

冬樹は普段から人を、特に爆豪を怒らせているのでおおよそのことを察したのだろう。
ちなみに教室で爆音がなる八割の原因を冬樹が占めている。
うまくいっている人は常闇くらいしかいない。

そんな雰囲気の変わった教室に気がついた冬樹はキョロキョロとあたりを見渡して教室にある時計を見た。

「あっ、そろそろ休み時間も終わるね。次は数学の授業だ。じゃあまた話そうね、轟!」

時計を見て時間を思い出したらしい。
冬樹はまるで何事もなかったかのように笑顔を作ると、そう言い残して席へと戻っていった。

「話すつもりなんてねえよ!」と轟はその背中へと言うが冬樹は振り向くことなく席へ行くので、轟はそれ以上の言葉を飲み込むと乱暴に舌打ちをして次の授業の準備を始めることにする。

轟はもともと冬樹のことをこのクラスで誰よりも普通に見えながら誰よりも頭がおかしな男と判断していたが。
その見方はこの数回話したことでより強固になった。






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