若様とばなな

「フッフッフ、ハル。そんなに食うと太るぞ」


ある昼下がり、私がデリンジャー君と一緒にせんべいをバリバリ食べながら雑談をしていると、突然どこからともなく現れた若様はそうおっしゃった。



そしてそんなことがあって一週間ほど経ったが。現在、私は医務室のベッドの上にいた。

なぜ、私が医務室にいるのか原因は分かっている。
5日前、私は仕事で戦いをしたときに口の中をおもいっきり噛んでしまったのだ。想像するだけで痛いだろう。そう私も痛かったよ。

それから口の中を怪我した私はしばらくの間痛いのでまともに食事ができなかった。
常々怪我なんて唾付けておけば治るという考え方の私は口の中の怪我なんて医者に行く必要はないと思って行っていなかった。なのでその事実は私だけしか知らない。

という経緯があり食事を我慢していたせいだろう。
私はまるでか弱い乙女のようにドレスローザのお城の廊下で倒れた。

こうして現在私は医務室に、ベッドの隣にあるイスに腰掛けた若様ことドフラミンゴ様とともに医務室にいる。

・・・なぜ若様が?

まだ体が言うことを聞かないので横たわりながらちらりと、おそるおそる横を伺うと若様はサングラスを装着しているので正確には分からないけど、なにやらこっちに鋭い視線を向けているように感じる。
口はヘの字だ。

確かに気絶する前に若様の私を呼ぶ声と体の浮遊感を感じたが、浮遊感に至っては幽体離脱でもしたのか、フヘヘヘと思っていたが。
・・・まさか若様に抱きあげられたなんてことないよね。
『若様もしかして私を運んでくださったんですか?』なんて聞くに聞けない。そんな事実なんてあったらパンクする人にガミガミ怒られるに違いない。確実だ。

だからといってじっっと見つめてくる若様になにから話ていいか分からない私は若様をじっと見つめ返した。
そのとき私は病み上がりということでうつろな表情をしていたので端から見たらまるでメンチの切り合いだっただろう。

しばらくして若様は口のへの字を逆にして笑うと若様の隣においてあった果物のカゴ(若様のモフモフに隠れていて気がつかなかった)からバナナを取り出すと皮を剥き、こちらに食べろというようにバナナの先端を私の口に差し出した。

普段ならそんな絵面にどんな公開プレイやねん!あっここには私と若様しかいないから非公開プレイか!!?とか言っていただろうけど今は口の中でまだ治りきっていない傷を思い出して、顔を青ざめていらないと首を横に振って口をぎゅっと結んだ。

すると若様はまた不機嫌そうにまた口がへの字になる。


「ハル、おまえは最近ずっと小食だったそうじゃねェか。何が理由だ?」


え?口の中の怪我ですが。

だけどその質問に答える為に口を開いたらそのバナナ押し込む気だろう。引っ込めないバナナがそれを物語っている。
分かってますぜ親分!ということで私は若様の質問に答える為に開かなかった。
若様の質問に答えなかったなどと知られたらあの髪の毛針してくる人に足かっくんされることだろう。が彼は今いない。確実だ。

頑なに答えない私の口にまたバナナを押しつけてきた若様だが、少ししてあきらめたようにため息をついた。バナナはまだ引っ込めてくれないが。


「前に言ったことを気にしてんのか」

「?」

「あの時の言ったことは本気じゃねェ。・・・ハル、おまえは太ってねェから気にすんな。んなことより倒れられる方が困る」


?・・・太る?

ああっ。思い出した。
そういえば前にそんなに食べると太るぞ☆と若様に言われたっけ。

・・・え?これってもしかして私、ダイエットしていたせいで倒れたってことになっている?

そんなバナナ。いやバナナ。

だめだ混乱している。バカな。

でも、もしそうだったらこの重苦しい雰囲気、とても心ぐるしいのだけど。

自分のせいで私が倒れたとか若様おもっているってこと?それ勘違いですごめんなさい。
口の中が痛いんです。

いや、でも今更口の中切っていたから食べられなかったってのも言いづらい。


「きちんと食事は取れ。そうだなァ、それでも食べねェならおれが直々に口開けて食わせてやるよ」


とひらめいたように言った若様はドエスな笑みを浮かべられた。

いや、言おう。
無理矢理食べさせられるなんて嫌だ。


「わ、若様、違うんで、グフっ!!」


正直に言うために私が口を開くと待機していたバナナが私の口の中を襲った。

傍目からみたらあんまりな光景だろうがそんなこと気にしていられない。

これは痛い。傷口が開く。バナナの酸味的なものがきつい。
若様はそんな私にバナナをおもいっきり押し込んでくる。

私は涙目になりバナナを握る若様の手をバンバンたたくけれど若様はきちんと食べるまで許してくれない。

こうなったらさっさと食べてしまおう。
私はもきゅもきゅとバナナを痛みをこらえながら食べた。



それから、私はバナナを完食して上機嫌になった若様に次はどっちが良いとオレンジとリンゴを見せられて医務室から全速力で逃走することになった。

若様の優しさが痛い(物理的に)


*****
嫉妬して太るぞって言ったら倒れられ心配しているドフラミンゴは少し暴走ぎみ。







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