邂逅少女
とある日、この日は卵の特売だったので私は母に頼まれて学校の帰りに卵を買いにスーパーに寄った。
そしてその帰り道、まるでイソギンチャクみたいな(でもすね毛がある足が生えている)怪人が現れた。
この地域は怪人が現れることが少ない場所なので、私は思わぬ遭遇に焦った。
これ、死んでしまう。
私はふつうの女子高生だ。
特別な力なんてもちろんない。
魔法だって超能力だって使えない。
唯一そんな私にできることといったらそう、逃げることだ。
そうと決まればと思ってした行動は私にしてみればはやかったと思う。私は久しぶりの回れ右をしてそのままダッシュした。
けれど、やはり怪人にとってみたら私なんてまるで蟻のようなバルスのごとくで五歩も踏み出さないうちに怪人の触手に捕まってしまった。
「わ、私なんて食べてもおいしくないですよ」
なんとか放してもらいたくてそう言うと、イソギンチャクはどこが口なのか「JKキタコレ」とおっしゃられた。
それを聞いてこんなのに食べられるなんてイヤだと再認識した私は暴れるけど触手はゆるみもしない。
「た、ったすけてください!!」
だれかヒーロー来てくれともう涙ながらに叫んだら、まるでその言葉が合図だったように
怪人が一瞬で真っ黒に焼け焦げた。
「焼却」
・・・あっ、あつい。
触手は長かったのでそれなりに距離はあったけど熱風がこちらにもきて暑かったので思わずそれに気をとられたけれど、聞こえてきた声にハッとして自由になった体で振り返ればそこには金髪のサイボーグの人がいた。
「怪我はないか?」
「あっはい!!」
私が反射的に答えると、金髪の人は背を向ける。
その背中に私はあわてて「あの、ありがとうございました!!」と頭を下げてお礼を言うけれど。
彼は背中を向けたままでなにも言わずに去っていった。
すごく、クールだった。
*****
それからしばらくして彼がヒーローになったと学校で知った。
いきなりのS級で顔がきれいだからあっちこっちで噂がもちきりだ。
彼はジェノスという名前らしい。
また会えるといいなと思って。
それから危なくない時がいいなと一人考えたことを訂正した。
のに、
それから私は望んだとおりにジェノスさんに何度も会うことができた。
望まなかった怪人との邂逅のときに。
今まで私は遠目にはあったけど怪人におそわれることは一度もなかった。
なのに最近遭遇率が非常に高い。
そして結構な確率でジェノスさんが助けにきてくれる。そのせいか名前まで覚えてもらったし、またおまえか。とも話しかけられましたよ。
おまけに最近では出会うと家に送ろうと提案してもらえるようになって。
今現在もジェノスさんに家まで送ってもらっている途中です。
思っていたより年の近かったジェノスさんとは話が合ったので私の学校のこととか、ジェノスさんの近況とか当たり障りのないことを話しているとジェノスさんは急に歩を止めて、私は不思議になって振り返りジェノスさんをみた。
するとジェノスさんは私にいつ怪人が現れてもいいように自分でも戦えるよう少し体を改造したほうがいいんじゃないか、と提案されました。
前までの私だったら改造ってっえ?と思ったと思うけど。本当に今怪人との遭遇率がハンパなくなっているので。しかも私はあれからすこし鍛えてみたけれど本当に常人レベルの力しかなかったし。
だからたしかに身の安全のことを思うともう人体改造して強くなったほうがいいんじゃないかとも思うけど。
いつもジェノスさんに助けてもらって申し訳がないけれども。
やりたくない。
そう思ってしまう。
けれど拒否の言葉を口にするのができなくてなにも答えられずにいるとジェノスさんはフっと微笑んで。
「いやならそれで構わない。俺がハルを守ればいいことだ」
と言ってくれた。
一抹の罪悪感を感じながらも。
今の私の顔は真っ赤に染まっていることだろう熱を覚えた。