強者どもが夢の後2
それはまだルフィが来ていない頃だった。
夜、山賊の住処で私はまだ子供なのでエースくんの隣で眠っていると隣から声を押し殺して泣く声が聞こえてきた。
薄目を開けて前を見ると、エースくんが背中を向けていてその体は小さく震えていた。
どうやらエースくんが泣いているらしい。
いつもは気丈に振る舞うエースくんだけど私はずるくも彼の過去を知っている。だからなぜエースくんが声を押し殺して泣いているのか察することができた。
でも私は知らないはずのことだから、彼の苦しみを分かちあうこともしてあげられない。
サボくんは知っているのかな。
知らない気がする。原作からも実際にエースくんを見ていても、深い悩みを打ち明けることはエースくんはなかなかしないように思う。しかもあれは話してはいけないことだ。
泣いているエースくんにどうしても放っておけなくて私はなにかしたくて、寝ぼけたふりをしてエースくんへ手を伸ばした。
そして後ろからエースくんを抱きしめる。
すると温かなエースくんの身体がフルリと震えた。
おそらく私が起きていることはエースくんは気がついているだろう。
拒否されたらどうしようと思ったけれど、エースくんは少しだけ身体を強ばらせてからしばらくして回された私の手に自分の手を重ねた。
エースくんは私の手を払おうとしなかったので良かった。
私がサボくんのように、これから現れるルフィのようにエースくんの力になってあげられたらいいのに。
自分の無力さが悲しい。