君だけの療法
※夢主が攻めぽい発言注意
エース隊長が風邪をひいたので隊長にネギで脅したあとは少しの間エース隊長と攻防をしまして、冗談ですよと告げ身を引き、それからはきちんと優しく看病をいたしました。
私以外にもほかの部下の看病もありたった一日で隊長の熱は治まりましたが念のためにもう一日安静にしてから隊長は業務へ復帰いたしました。
が、今度はエース隊長の看病にいそしんでいたお馬鹿さん・・・ゴホン・・・一番隊の部下が風邪をこじらせました。
まったくうちの隊のなんと体調管理のなっていないことでしょう。
私は彼にもネギの刑にしてやりましょうかと朝食を食堂で取りながらふつふつと怒っていますと、目の前の席にエース隊長が食事を持って現れ腰をおろしました。
「よう。おはよう、アキ」
「はい、エース隊長おはようございます。お加減はよろしいですか」
「おう」
「・・・」
「・・・」
なんだか、いつもより会話が続きません。
いつもでしたらエース隊長は私に次から次へと話しながら食事をして食べカスをこぼしていきなり寝始めるのに。
今日は目の前におかれた食事に手をつけることなく隊長はこちらにジっと視線を送ってきますので違和感を覚えました。
まあ、おそらくは何か私に言うことがあり言うべきかどうか悩んでいるのでしょう。
その程度でしたらそれなりの期間彼の補佐をしているので分かります。
ですので私は黙って隊長の言葉を待っていますと、意を決したように隊長は口を開きました。
「アキはあいつの、風邪の様子見に行くのか?」
「ええ、行きます」
名前までは言いませんでしたがすぐに風邪をひいた部下だということは察したので、私はうなずきました。
いち部下など見舞いに行く必要はありませんがまあ時間もなくはないですし見舞いに行くだけで心証がよくなるのなら別に悪くはないでしょう。
そんな打算あってのものですが。
私の答えにエース隊長はなぜか顔をくしゃりとまるで泣きそうな風に崩しました。
なぜそんな顔をされるのか意味が分かりません。
「・・・ネギは持っていくのかよ」
「はあ。そうですね。持っていこうか迷っています」
あまり食事中にその会話はしたくはありませんが。というか隊長は突然なにを聞いてくるのでしょう。ネギを持っていくかなど。
あれですか、自分のように怖い目に遭うのを阻止するつもりでの質問でしょうか。
それでしたら別に止めてもいいですけど。その代わりのペナルティーは何かしたいところですが、と内心思います。
するとエース隊長は私の迷っているという返事にキッと視線を鋭くしました。
まったく部下思いの人だと私が思っているとエース隊長はガタっといきおいよく立ち上がるとテーブルに両手をつき、私へと前のめりの姿勢で大きな声で言いました。
「アキ、ネギを使うのはおれだけにしろ!他の奴のケツに突っ込むんじゃねェ!!」
「・・・・・」
なにを言っているんだこのバカ隊長は?
思わず口の端がひきつりました。
ちょっとやめてください。今まで騒がしかった食堂が一気にシ・・・ンとなったのですけれど。
みんな縮こまって黙々と食事をし始めたんですけど。
空気を読むなら変わらずに騒がしくしていてください。
「この馬鹿エース、なにをおっしゃっておられるんですか。この馬鹿!」
「馬鹿じゃねェ!アキが他の奴にも使うって言うからいけねェんだろ!!」
「別に最後までしませんよ!」
「当たり前だ。んなことしたら燃やす」
「はぁ?やってみられるものならやってみなさい。あなたより地位は下とはいえ若造に負けるほど落ちぶれてはいねェ・・・いませんよ!」
思わず白ひげに所属する前の元の口調が出そうになりながらも私も立ち上がり顔をつき合わせてエース隊長と口論をしていますと、少々熱くなりすぎたせいで周囲の気配に気づくのが遅れました。
気がついたら私は後頭部を誰かに掴まれ、同じく後頭部を掴まれたエースの額と思い切りぶつけられました。
それにより私たちはその場でお互い額を押さえて唸ります。
私たちの額同士をぶつけた犯人はマルコ隊長でした。マルコ隊長は痛がる私たちを冷たい目で見下ろしてきます。
本当に容赦なくやられたので、とても痛いです。
「痴話喧嘩は外でやれよい」
せめて痴話は付けないで言ってください。
マルコ隊長まで勘違いをしているような言葉にそう反論したかったですけれど。額のダメージがひどく、私は唸ることしかできませんでした。
結局それから私たちはまだ食事がすんでいませんでしたので席について黙々と食事をとりました。
その後、部下の見舞いへはネギは持っていきませんでしたが。
代わりにエース隊長が私を見張るようについてきて、なにやら不機嫌そうなエース隊長に部下はおろおろとしていました。
これなら見舞いにこないほうが優しさでしたと思いましたが後の祭りです。