ぐうたら少女
私の幼なじみはとても面倒見がいい。
私がこれがほしいと言ったら譲ってくれるし、これが食べたいと言ったら料理も作ってくれる。
とはいえ、口では「しかたねぇな」と嫌々な感じで動いてくれるのできっとこれが有名なツンデレだったのだろうと思う。
そんな感じで女子力・・・、モテ要素を着実に磨いてきた幼なじみは大学生になり、そりゃあもうモテ男子に成長した。顔も元々は整っていて女みたいな顔だったけど、年とるにつれて男らしくなったしね。
彼女も引く手あまたで今は雑誌にも載るモデルさんと付きあっっているらしい。
「うん、サンちゃんがモテるようになったのは私のおかげだよね」
「なに言ってやがるこのアホは」
私以外の女性には吐かない暴言を吐きながらもリンゴを剥く手を止めないサンちゃんは本当にいいお嫁・・お婿さんになるとおもう。
サンちゃんがいま私のリンゴを剥いてくれているのはちなみにわたしがリンゴを食べたいと言ったからだ。
サンちゃんは彼女がいるにも関わらず、今私の家にいる。
まあ私のことなんか女だなんておもっていないだろうし。
「でもね、わたし思うのよ」
「何を？」
「私に彼氏ができないのはサンちゃんのせいだせい思うの」
「はあ？」
サンちゃんは何言ってんだこいつって目で私を見てきた。
でもね、これは絶対なの。
「だってサンちゃんが何でもやってくれるから私の女子力を磨く機会が無くなったんだよ。私りんごの皮も剥けないし」
正確には剥けることには剥けるけど家庭科で習った程度のいびつなものだ。
サンちゃんが剥いてくれたように店に出しても問題のないものではない。
うん、リンゴおいしい。
「なら頼まずに自分で剥けばいいだけのことだろ」
「分かってねーな、分かってねーよ。私より上手にできる人がいるのにわざわざ剥くだろうか、いや剥かない」
「・・・・一生未婚でいろ、くそやろう」
「そこはもらい手なかったら俺がもらってやるとか言ってよ」
「言うわけないだろこんな幼なじみありえねェ」
「ひどいっ！」
あはははと私はふざけてそう言う。
正直少しだけ傷ついたことなんて微塵も出さない。
私が少しでもそんな風になったらサンちゃんはもう幼なじみをしてくれない気がするから。
今だって彼女がいるのに会ってくれる。
本当はだめだと思う。彼女さんにすごく悪いことをしている。
それは分かっているけど寂しいのだ。
でもこんな関係が一生続けられるとも私は期待してはいけない。
「私、料理教室にでも通おうかな」
「お前が？続かねえだろ」
「そんなことないしっ！ちょうがんばるし。それでおいしい料理を作ってサンちゃんをたまげさせてやんよ」
「へえ」
私が胸をはって宣言すると、サンちゃんは楽しそうに笑った。
「期待しないで待っているよ」
きっとおいしい料理を作れるようになって、彼氏を作って少しでもサンちゃんと会いやすくなれたらいいな。