強者どもが夢の跡

※死ネタ
※転生トリップ


私には前世の記憶があった。
その中にはこの世界についての記憶もある。

幼いころに家族のいない私はガープさんに拾われて山賊のダダンさんに預けられた。
そこには二人の男の子がいて、それは前世から知っている二人、エースとサボだった。

二人はいつも二人で遊んでいた。
それが羨ましくて私も一緒に遊びたいというとおまえは弱ェからだめだと断られた。
確かにここは治安も良くないしましてや私は女だ。

でも、外を駆け回る二人が羨ましくて。時々戦利品だとたくさんのものを見せてくれることが嬉しくて。あこがれた。
だから私は二人と仲良くすることを止めた。

私は外で遊ぶ代わりに家事を手伝った。
その褒美にダダンさんは身の守り方を教えてくれた。

そしてそのうちに漫画の主人公であるルフィが現れた。
ルフィは最初は私といるのは格好悪いと感じたのかよそよそしかったけれど、ご飯を作ってあげているうちにハル、ハルと懐いてくれた。
私はそんなルフィが可愛かった。

すると、今までそんなことなかったのにエースくんやサボくんも料理をほめてくれるようになった。
だから私は無視した。

それから、天竜人が現れたり、ゴミ山が焼かれたり、サボくんがいなくなったり、エースくんが出ていったりたくさんのことがあった。
サボくんが死んだとなったときは私は彼が生きているということを伝えたかったけど、私にはやりたいことがあったからあまり未来を変えたくはなかった。

エースくんが出ていってすぐに、私も海兵になるために島を出た。それを言ったらガープさんは喜んで推薦をしてくれた。

子供が一人だけになるルフィが心配だったけれど、私が出ていくその日ルフィは最後まで唇を噛みしめ涙を流さなかった。私は強くあろうとがんばろうとするルフィに私は物語の記憶がなくともこの子は大丈夫だと思っただろう。

海兵になってから私は必死にがんばった。
がんばって強くなったし、前世の記憶の分知識もあったからそれを利用して功績を上げた。


そしてずっと希望していた海軍本部への移動が決まって私は、その手紙を渡してくれた上司に何度も頭を下げた。
上司はそれを感謝だととらえたのだろうけれど、それは謝罪だった。

それからもひたすら強さを求めて、悪魔の実の力も手に入れることができた。それは動物系の能力だった。
動物系にしては力は弱いが、素早く動け軌道力に優れている鼠の能力で本当にそれでいいのかと聞かれたけれど、私にとってはそれが重要だった。

その間にエースくんもルフィも名前を上げていった。
エースくんとは一度だけ白ひげの監視の任務についたときに立ち寄った島で会った。

ハルは海兵になったんだな。と気安く話しかけてきたエースくんに私は感情の無い視線を送り、ええ、だからあなたと私は敵同士よ。今は攻撃の許可が出ていないから見逃してあげるけど次に会うときはどうなるか分からないから近づくべきではないわよ。と自覚の無いのか私を舐めているのか理由は分からないけれど話しかけてきた彼に忠告すればエースくんは顔をしかめた。

ルフィとは偶然、休暇に訪れていた島で会った。こんな広大な海で偶然出会うなんて本当に彼は物語の主人公なのだろう。

私に気がつくとルフィは私に抱きついてきておれの姉ちゃんだ!とそばにいた仲間に私を紹介した。
そして私が海兵であると知ると警戒された。

これが普通の反応だろう。
姉のような存在とはいえ、敵である海兵に抱きついてくるな。今が休暇でなければ私はあなたを捕らえていた。と、ルフィに注意した。それでもルフィは回した腕は解かなかったが。

そんな様子を見ていたルフィのクルーたちにはしっかり者だと驚かれた。一人、眉毛の人はなんだか求愛してきたので無視をした。


それからまた時間が過ぎてエースくんが海軍に捕まってインペルダウンへと送られたことを耳にした。
そのことからしばらく経って私の様子を見に来たガープさんは、おそらくそういうことだろう。

私はやはりエースくんのことを聞かれた。

海軍の人たちには伝えていたが、私のこの世界の両親は海賊に殺されていた。
その私の町を襲った海賊はガープさんにより倒され、ダダンさんに預けられたのだ。

ので私は海賊は憎い存在であるし、エースくんは海賊に自分の意志でなったのだから捕まり処刑されるのは当然だというスタンスで話をして、最後にガープさんに海賊王であるゴールド・D・ロジャーの子として彼をどう思うかと聞かれて、私はそれについてはどうでもいいと答えた。

だれがだれの息子だとかそんなことはどうでもいい。



そしてやってきた頂上決戦で、私は中程の場所で戦うこととなった。
そして原作の通りにルフィが現れてそれを追う振りをして私は敵をいなしながら追いかけて、エースくんが挑発に乗り、サカズキ大将と戦いはじめて、ルフィをかばい殺されるというところで私は能力を発動して大鼠となりエースくんとサカズキ大将の二人の間に入った。

私は少しだけ武装色の覇気を使えたけれど、やはりサカズキ大将などに効くようなものではなくて、死にかけながらも最後の力を振り絞り二人を口にくわえて白髭の船へと走った。

突然現れた獣に二人は驚いた様子だったけれど、ルフィはハル?と私の名前を呼んだ。

私はそれに答えずに走った。

後ろからマグマが飛んできたけれど、構わずに走った。

そんな私に涙声でルフィは私の名前を呼び、エースくんもルフィの言葉を信じたようで私の名前を呼んだ。

そのおかげで私は朦朧とする中、船のそばまで走ることができた。

船にはたどり着けなかったけれどここまでくれば大丈夫だろう。
私は二人を口から放し、能力を解除せずに倒れた。能力を解除しなかったのは私だと確信したら優しい二人は私を連れて船へ戻ろうとするだろうと思ったから。
少しでも二人が死んでしまう可能性を減らすために私だと気がつかれたくなかった。

けれどルフィはなぜか確信しているようで逃げずに私の名前を呼びながら私の大きな獣の体をひっぱった。
何をしていると唸り声をあげると、やだ、ハル。絶対にだずげるから!!と。私が島を出ていくときには我慢していた涙を流しながら私を引っ張った。

それにもう一つ力が加わる。

エースくんだった。

彼も私の大きな体を引っ張っていた。
あんなに私はエースくんに冷たくしていたのに。

もう助かるほどの体ではないのに二人は私を助けようとしている。

なら、仕方ない。

私は人の体に戻って、すぐに意識を失った。


もう起きることはないだろう。


それでも最後に私の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、私は死ぬための人生だったけれど幸せだと思った。

知っていながら残して逝くのは本当に自分勝手だと思う。

死なない方法もあったかもしれない。

けれど一度きりの賭けだから、勝てるものを選びたかった。


どうか彼らに幸があらんことを。







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