緑色の療法
※異世界トリップ主
「え?エース隊長が風邪をひいたって?」
朝早く、隊長よりも古参で年上ですが二番隊の副官を担っている私の元にまで伝えにきてくださった隊員は私にそう伝えました。
「隊長、なに風邪をひいているんですか。馬鹿は風邪をひかないっていうくせに何ですか。自分は賢いアピールですか?そういうのいらないです」
話を聞いて慌てず騒がずに朝食をとってから隊長の見舞いに訪れた私は、用意されていた隊長の横たわるベッドの横の椅子に腰掛けてそう隊長へ労りの言葉をかけますと、エース隊長はガラガラの声でうるぜェと反論しました。
心外です。
「なんですか。うるさいってそれが見舞いに来たものに対する言葉ですか。まったくこれだからあなたは風邪をひくんですよ。だいたい、風邪をひいた理由がお酒を飲んだ後に腹を出して甲板で寝たからって。馬鹿ですよね。馬鹿以外の何者でもないですよね」
そう私が隊長へ気遣いの言葉をかけると、隊長はうっと唸り小さくずまねェと口にします。
一応は愚かなことをしたという自覚はあるらしいです。
・・・まったく、子供じゃないのですから。
私が呆れて息を吐きますとエース隊長は不安そうにこちらに視線を送ってきます。
別に嫌みは言っても私は怒りたいわけではありません。
「とはいえこのような状態になったことは私にも責任があります。私がきちんとあなたに付いていれば、せめてなにか上に掛けて差し上げられたものを」
私は宴会のときはいつもなら隊長のそばに付いていましたが、その日は同じ隊の部下が相談があるからと宴が催されているため人のいない部下の大部屋で酒を飲みながら悩みを聞いていました。
まさかその間に隊長が風邪をひくなんて思いもしませんでしたから、夜も更けていましたしそのまま私は自室へ帰ってしまいました。
私があのときに甲板へ様子を見に行ってたら隊長にこんなつらそうな思いはさせませんでしたのに。と言っても後の祭ですが。
私は眉を寄せてすぐ近くにあった隊長の手を握ると隊長はびくりと手をふるわせましたが拒否はしませんでした。
エース隊長の手は風邪のせいで熱かったです。
こんなに熱を出して。
「それで私、隊長へ見舞いの品を持ってました」
「え?」
「これを使って早く治して下さい」
私は隊長の手を放し、袋に入れて持ってきたそれを出しました。
隊長は私が取り出したそれを見て目を丸くします。
私が取り出したのは野菜のネギです。
「え?なんだよ、ぞれ」
「ネギですよ」
「それは分がる、げど」
おそらくその使い道が分からずに困惑しているのでしょう。
私はそんな隊長に笑顔を向けますと、隊長はいやな予感を感じたのかビクッと体をふるわせました。
失礼ですね。当たっていますけど。
「これを尻に突っ込むと風邪が治るという民間療法が私の故郷にはありました。ですので突っ込みますのでエース隊長、おとなしくしてくださいね」
「なっっっ、アキ!!!?」
語尾にハートマークを付けるように隊長へ言えば隊長は顔を真っ青にして逃げようとしたので私は布団の上から隊長を押さえ込みました。
まあ、それは漫画のネタであった冗談ですが。
私を心配させたのですからこのくらいの冗談は許していただきたいですね。