浜辺の追想録
※異世界トリップ
マンガのこの世界に一人来たおれは困った。
最初のころは親や家族のことが心配で、はやく帰りたいと願ったけれど帰れる兆候もなくて。
おれは仕方がないので最強の剣士を目指すことにした。
そこ、なんでそうなる!!?ってつっこまない。
かめはめ波を撃とうとするより常識的だろう。波はいつかできるなら撃ってみたいけど。
男にとって最強ってのは永遠のあこがれだ。元の世界でもおれは剣道をしていたし、強かった。
そしてこの世界では向こうの世界の平均を基準に反映されるらしい。つまりこの世界に来てもやはりおれは強かった。
ので、おれは開き直り剣の道を目指しながらも海賊を狩って過ごしていた。
本当は海軍に所属したかったが身元が確かでないおれには難しいらしい。
だから悪いことはしないでお金をためていたのだが、そんなある日おれの前にアニマル柄の帽子をかぶったイケメンが現れた。
「おまえが黒剣のアキか」
「・・・トラファルガー・ロー」
ある程度おれの名前が売れていたとき。
とある島の浜辺を歩いていると女性人気おそらく1位のトラファルガー・ローがさっそうと現れた。
さて、ローといえば元の世界でもよく知っている思い出深いキャラだ。
だれが買うんだこんなものと思うくらい色気たっぷりの彼の上半身裸フィギュアが発売されたときは衝撃的だったが、それが姉の部屋にあったときのあのおれの心は忘れない。
ああ、ちなみに黒剣のアキとはおれのニックネーム・・・じゃなくて呼称らしい。
おれの使っている剣が黒いからとか安直な名前なのに厨二臭さも相まっているその呼称におれは恥ずかしさと切なさを覚えた。
んな読んでいる人への説明(メタ)をぼーと考えながら死の外科医の出方をうかがっているとローはおれに刀を向け、おれの船に来いと、おそらくマンガならここでドンっと音が鳴るような感じに仲間に誘ってきたので、おれもそれにドンっと答える。
「すまないが。おれは賞金首は斬っても、賞金首になるつもりはない」
おれも空気を呼んでなんかかっこつけて言ってみると、ローはフっと笑い。
「なら力づくで手に入れるまでだ」
と、手を動かしたので。おれは”room”が展開される前に逃げた。
え?最強の剣士を目指しているなら戦えよ?って?
今日はもう閉店店じまいしているのでまた明日!!
いやさ、原作のキャラクターってなんか神様的な力が働いて負けそうじゃん。
おれは脱兎のごとく逃げた。
ちなみ、おれは足も早い。学校の持久走も陸上部を抜いて4位前後だった。
さすがに逃げたらあまり走っているイメージのないローは追ってこないだろうと思ってスピードを落とさずに後ろをちらりとみると。
なんかローもすっげースピードで走って追ってきていたんですけど。
えっなんで?
さすがイケメン超速い。
絶対小さいころは足が早くてモテて、大きくなったらまたモテるモテ人生の人だよこの人。
でもここで能力を使って追ってこないってことはまだ能力をマスターしていないのか?
そんなことを考えながら逃げて追われての全力疾走をなんと二時間しました。
思った以上にローはしつこかった。
浜辺で追いかけっこ(全力)する男二人・・・うん。
最終的にはお互いぜえぜえ言いながら、おれの船に来い、いやだを言いあって心臓盗られて船にドナドナされることになった。
「アキ、何を考えている?」
あれから月日が経って、おれがローの船長室にコーヒーを持ってきて一緒に飲みながら話しているとき、ふと彼との出会いを思い出してボケっとしたらローは目ざとくそれを聞いてきた。
「ああ、ローとはじめて会ったときのことを思い出していた。・・・あのときはローが追いかけてきて驚いたよ」
本当止まったら殺されるってくらいの形相で追いかけてきたからねうちの船長。さすが人類最強と同じ中の人なだけあった。
思わず顔をしかめたおれをみて、ローはニヒルにフっと笑うと。
「それがはじめてじゃねェよ」
と意味深に言ったので。おれは驚いては?と言うとローは自分の左胸をぎゅっと押した。
途端におれの胸が圧迫される。
現在おれの心臓とローの心臓はシャンブルスされている。おれが逃げないようにするためらしいが300ベリーあげるから返してほしい。切実に。
とまあ、つまりローの胸にはおれの心臓があるわけで。
「何をするんだ。ロー」
それを咎めるとローは楽しそうに喉をふるわせた。