ラッキースケベ前
私の学校にはドジっ子(先輩)がいる。
背が高くて強面で顔立ちが整っていて面倒見がよくて真面目でいい人。しかも家はやんごとなき家柄らしくて。そんな三拍子も四拍子もそろう先輩はとてもドジっ子だ。
私もよくコケているところを見るし、理科の実験ではアルコールランプでよく燃えているらしい。いったいどういうことなのだろう。
と、なぜ私がドジっ子先輩のロシナンテ先輩の説明をしているのかというと。
端的に説明するとまず、私は廊下を歩いていた。
そして角を曲がる時にだれか大きな人とぶつかり。
その衝撃で倒れそうになったのはなぜかぶつかってきた相手であるロシナンテ先輩で。
私の上に倒れてきたロシナンテ先輩に押し倒される形で私も転んだ。
さすがに大きいだけあり重かったが、まあまだそんなことは、良い人認定であるこの先輩なら許容範囲だった。
だけど、私を下敷きにしてしまい慌てて上半身起きあがらせた先輩に。
「す、すまねェ!!?」
と言われながらなにを間違えたのだろう胸に両手をつかれて条件反射なのか捕まれて。
さらに慌ててそれに気が付いた先輩が胸から手を放して、私にまたがったまま謝ってきたのが耳に入らないくらい私は動揺して
「ぐすっ」
泣いてしまった。
放課後なので人もおらず誰にも見られていなかったのは幸いだったかもしれない。
あれから本泣きしてしまった私の隣に腰をおろしてロシナンテ先輩はオロオロしながらも大丈夫かという心配の言葉と、すまねェという謝罪の言葉を何度も繰り返した。
「もう、大丈夫ですから、ぐすっ大丈夫です。先輩も、帰って大丈夫ですよ」
「んな目が真っ赤なのに一人にできるか」
「別にこのことをネタに、強請ったりなんてしないので心配しないでください」
「なんか怖いこと言ってる!!?いや、それを心配してんじゃなくてだな」
なかなか止まらない涙にロシナンテ先輩は手触りの良さそうなハンカチを手に持って心配そうにのぞき込む。
ちなみに先輩がハンカチを出したすぐ後に私は自分のハンカチを取り出して顔に当てたので、ハンカチをしまうタイミングを逃しているようだ。
まあ、とにかく私としてはきれいな泣き方ではないのでできれば帰ってほしいと思う。
涙や鼻水でぐちゃぐちゃだ。
もういまの涙は泣いてしまって恥ずかしいという涙でもある。
こんなに泣いてしまい恥ずかしい。
「本当にすまねェ。なにかおれにつぐなえることはねェか?できることならなんでもする」
別に先輩だっていつものドジが働いてしてしまい悪気のなかったことだろう。
つぐないなんていらないけれど、何もいらないという方が困らせてしまうだろうなとロシナンテ先輩のすがるような表情を見て思った。
本当に話に聞くとおりにいい人だ。
「じゃあ、駅前のフルーツ専門店のパフェ奢ってください」
と、ずっと気になっていた学生にはお高いパフェを思い出したので言ってみたら、ロシナンテ先輩は「そんなことでいいのか?」と首を傾げた。
このブルジョワめ・・・
ハンカチに顔を埋めながらそのお店の一番高いパフェを頼んでやろうと心に誓った。