よみねずみ4

(コラソン視点)

おれはアキに連れてこられた島の海の桟橋から海を眺めていた。
どんなに目を懲らそうとも青い海面以外なにも見つからないここは、本当に近場に島はないのだろうと分かる。

考えるのはローのことだ。
ローは無事に病を治すことができただろうか、泣いていないだろうか。
無事で、いるだろうか。

でもおれはそばにいることはできない。
1人にしてしまった。

せめてローが安全に生きていることだけでも確認できれば。

そう願い、けれどそのたびにアキの顔が思い浮かぶ。

おれがここを離れたら今度はアキが一人になってしまうのだろう。
彼はこの島の住人から迫害はされていないものの畏怖されている。
自分は嫌われものだと思い込んでいる。

もしかしたらあいつは一人が寂しくておれの命を助けたのだろうか。

そんなことを考えてしまうと迷いが生まれる。


だが・・・
生き残ったからにはローを一人にさせられない。

必ずこの島を出ていく。
おれは行かなければいけない。

とは言ってもアキは命の恩人だ。
嫌われたら外に出ることができるそうだが、嫌われるようなひどいことなんてできない。

だからどうにかしてアキに頼み込めないだろうか。

やれるだけやるしかない。
それでも駄目なら、嫌われよう。


おれはそう決意を胸に、アキの家へと帰ろうとして




コケた。

コケたことにより、おれの体はフワリと桟橋からふり落とされた。

桟橋の高さはそこまで高いものではなかったが、下は海だ。
不運なことに手の届く範囲に掴めるものもない。
能力者であるおれは泳げないので絶体絶命である。

兄であるドフラミンゴなら急いで桟橋に糸をかければいいことだが、おれのナギナギにできることは海面に叩きつけられる音を消すことしかできない。

だが今それはやったら駄目だ。


・・・こんな死に方アリかよ


おれは大きな音を立てて海にのまれた。







「ひっぐ、グス・・」

目を覚ましてまず最初に感じたのは腹の上に感じる温かな重みで、次に聞こえたのはだれかが泣く声だった。

おれは体が怠くおっくうだったが、その泣き声に聞き覚えがあってゆっくりと目を開けると身体中がびしょ濡れのアキがおれの胸に顔を埋めて泣いていた。

辺りを視線だけで見渡すとおれが落ちた桟橋が見えた。

どうやらここはあの桟橋から近い浜辺らしい。


「あっ!コラソン起きたっ!??」

アキはおれが気がついたと分かると思い切りおれの首に抱きついてきた。
心配してくれた気持ちは嬉しいが、あまりにもアキが必死に抱きついてくるので息ができない。
助かったのに殺される!?とアキの背中を力の出せる限りドンドン叩くと、アキはなんとか腕を緩めた。
あと少し遅かったら確実に落ちていた。

思わず咳き込んだおれにアキは涙で汚れた顔をおれに向けた。

「コラソン、おれ、心配したんだから!コラソンがいたから声かけようとしたら、いきなり海に落ちちゃうんだもん!コラソンどんどん沈んでいっちゃって、ひっぐ、死んじゃうかとおもって。おれ追いかけて海に入って泳いでコラソン助けたけど、ぜんぜん起きないし」

「アキ、お前が助けてくれたのか」

「うん。おれがここにコラソンを持ってきた」

「ありがとな」


ふるえながら、コラソンが生きてて良かったと涙ながらに言うアキに心配させたのかと申し訳なさを感じながらもお礼を言ってから。

ふと、おかしなことに気がつく。


「アキ、おまえも海に飛び込んだのか」

「うん、そうだよ」

「・・・アキは悪魔の実の能力者だよな」

「うん」

「能力者なら、泳げねェだろ」

「そうだけど。・・・・・・・・・あっ!?おれ泳げなかったんだ。たいへんだ、おれ、おぼれちゃう!!?」

なぜ能力者のアキが泳いでおれを助られたのか疑問に思って聞くと、アキは今頃になってどうしようおれ死んじゃうよ!とわたわた騒いだ。
どうやら本人も泳げないことを忘れていたらしい。
溺れる溺れるとアキは叫んでいる。

「アキ落ち着け、アキはもう岸にいるだろ」


とおれは諭すがアキは「でも、おれ死んじゃう・・・」と涙ながらに言う。

どうして能力者なのになんで泳げるのだろう。
もちろんアキが助けたと嘘をついている可能性もあるが、びしょ濡れのアキを見るにアキが泳いでおれを助けたのは間違いがないと思う。

疑問は残るが。
まあ、それは後でたしかめたらいい。

涙目でふるえるアキの頭に手をやって落ち着かせるようにぽんぽんとたたくと、アキはすぐに泣いていたことを忘れたように嬉しそうに笑う。

「コラソン、大好きだよ」

だから死んじゃだめ。

そう言っておれを抱き締めるアキを見て、また出て行きにくくなっちまったと内心ため息を吐きながらも自分を心配していてくれた存在に胸が温かくなったのを感じた。







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