よみねずみ2
この拾いものはとても静かだ。
まだ立てないみたいだけど、這って逃げようともしないし、泣いたりおれにひどいことを言わない。
うるさいのはいやだけど、静かすぎてたまにいなくなっていないか心配になるくらい静かだった。
だからちゃんといることを確かめるためにペタペタさわってみるけど、ちゃんと温かいしどうした?っておれに心配そうに声もかけてくれる。
こんな反応いままでなくておれは困った。
「ねえ、コラソン。コラソンはなんでそんなに静かなの?」
「なんでって・・・」
本人から聞いた彼の名前を呼んで、コラソンのベッドの横に膝立ちになって訪ねてみるとコラソンは困ったように眉を潜めた。
「アキはおれが暴れなけりゃならねェことをなにかするつもりか?」
「おれは拾いものになにもひどいことなんてしないよ」
「・・・」
おれはそう断言するけど。
ひどいことをしないっていうのにコラソンはやっぱり眉を寄せたまま。
信用されていないのかとかなしくなるけど、おれなら信用しないからしかたないか。
「おまえはおれを奴隷にするとか、そういうつもりはねェのか?」
「奴隷?奴隷ってやってほしいことをむりやりやらせるための人間のことだよね」
「・・・少し違う気もするが、まあ。だいたいそんな感じだな」
奴隷。
この島の外に行って、そんな人たちをたくさんみてきた。
別にいいとも悪いとも思わないけど。おれが奴隷になったらって想像すると怖いから好きじゃない。
コラソンは自分がそうなるのかなって思っているのかな。コラソンも怖いのかな?
「おれは奴隷いらないよ。自分のことくらい自分でできるし」
コラソンはおれのものでいてくれたらそれでいいよ。と言うとコラソンは戸惑ったような顔をして口を結んだ。
コラソンはひどいことしないし、おれが近くにいても嫌わないでくれる。
おれはそれがうれしくて手放したくなくなっていた。
おれがローって子になれたらいいのに。
それなのにその子供のために外に行きたがるコラソンに、少しだけ胸が痛くなった。