猫の日
2月22日。
今日は猫の日だきゃっほい!!
おれは意気揚々と学校の廊下を猫耳カチューシャをもちながら、自分もそれを装着してうろついていた。
「ねえ、君もねこ耳つけてみないかにゃあ」
そしておれは適当にロックオンした女の子に声をかけまくる。
名付けて同じねこ耳でラブラブしようぜ大作戦だ。
へ?気持ち悪いって?
ふふん。こんなことやっているのがコフコフ言っている人なら、え?無理とか思われるだろうがおれはモテるために命をかけている男。
もともとの顔立ちは悪くないし流行を踏まえたおしゃれも完璧だ!
なので女の子にねこ耳を装着して「かわいいにゃ」って言ってやればみんな顔を赤くする。
今声をかけているめがねが優等生っぽくてかわいい女の子も例にもれない。
さあ、今こそLINEゲットだぜ!と口の端をつり上げれば背後からおれの首元を引っ張られてシャツが首に食い込んだ。
「グェっ」
「なにまた誰彼構わずナンパしてんだよい。やりちん男」
後ろからそんな失礼な声をかけて引っ張りついでに腕を回しておれの首を閉めてくるのは同級生の親友、マルコだった。
そんなおれにハっと我に返った女の子はごめんなさいして逃げていく。
ああ、待ってくれ違うんだ。
手を伸ばそうとしたけど、その手はマルコに捻り上げられた。
「ちょっギブギブ、マルコ」
「うるせえよい」
「じゃあ暴力やめて!そしたら静かにするから!!」
そう懇願すればマルコは舌打ちしながらおれの首から手を放した。
「あーあ、せっかくのかわい子ちゃんが」
「てめぇは節操なさすぎよい」
「なっっ、おれのどこが節操ないって!?そんなこといったら世の男はみんな節操がねぇよ」
なんて言ってもこちとらDTである。
こんなに顔も悪くなく積極的なおれはまだ女性経験なんてない。おかしいだろ?
だから必死になっているのに、その事実を知っているくせにマルコはおれのじゃまをしてくる。
おかげでいつのまにかおれは遊び人のレッテルを張られていますよ。違うからウブな好青年ですから。
とはいえ、それをぶっちゃけるのもなんだか恥ずかしいから身近な友人しかその事実をしらないけど。
「ハっ」
だがそんなおれの抗議にマルコは鼻で笑った。めっちゃ見下してくるというおまけつきで。
おまっ自分がDTじゃないからって偉そうに・・・そうですね偉いですよねうらやましい。
いまは彼女はいないらしいけど、マルコは前にめっちゃおっぱ・・・グラマラスな女性とおつきあいしていた。うらやましいことに!
内心ギリギリしていると、マルコはふとおれが引っ張られたことで落とした女の子用のねこ耳カチューシャを拾い、拾ってくれたのかとみていると。
なぜかカチューシャを自分の頭に装着した。
マルコのあたまの上におれと同じふさふさの耳が乗って、それをあっけにとられて見ているとマルコは無表情で口を開いた。
「アキは馬鹿にゃーよい」
「って、語尾どっちかに統一しろよ!」
おかしな語尾に思わずツッコめばマルコは再び「馬鹿にゃーよい」と繰り返した。