yume | ナノ





 なまぬるい血の滴りが口にポタポタと垂らされる。濃厚でしょっぱくて甘い、溶かしたバターのような血だった。傷のついた指を口に押し込まれ、舌の上に血をなすりつけられる。極上のワインを飲んだ時のような酩酊感を覚え、傷のついた指を一生懸命しゃぶった。

 夜道を歩いていただけなのだ。そんなに更けてもいない時間の、春の夜だった。
 銀座へ買い物に行った帰りで、わたしはその時いつもより上等な洋服を着ていた。コツンコツンと慣れないハイヒールでゆっくり歩きながら、一時間悩んで買った帽子とスカーフの入った袋を見てはご機嫌になっていた。
 銀座の洒落た街並みと離れがたいと、バーに寄り道をしたのが良くなかったのかもしれない。
 電車を降りて、家に帰る夜道で二人の男に突然襲われた。とうの昔に管理する人のいなくなった神社の拝殿へ連れ込まれて、おぞましいことをされた。
 布の塊で口を塞がれ、手を押さえつけられ、暴れると殴られた。犯され、蹂躙される。無理やりに開かされた足の股に何かを塗りつけられてからは更に地獄だった。脳が焼き切れたのかと思うほどの衝撃が身体の隅から隅まで走ったのだから!股間に塗られたアレはきっとシャブだったのだろう。
 強姦の屈辱は確かに輪郭をもっているのに、それを上回る快感に呑まれてしまう。何回も気をやって、自分から腰を振って男の肉棒を求めながら、もう一個の自分が絶望に泣き叫んでいる。

 そのあとわたしは首を掻き切られてあっけなく殺された。男たちは最初からそのつもりだったのだ。
 狭くて埃っぽい拝殿の中は破瓜のせいで生臭くて、わたしは死の間際だというのに、絶頂から戻れないでいた。己の血潮の迸る音と木々のざわめきがとんでもなくうるさくて、うるさくて、うるさくて、死の恐怖なんてありゃあしない。
 白目を剥きながらサイケデリックな夢を見て、そしてわたしは鬼になった。

 無惨様の血は濃くて甘い。荒い呼吸で乾いた舌を、ぬめった親指がざりざりと濡らしてまわり、わたしはそれでまたイッた。
 轢かれたカエルみたいな格好をしたわたしの、開いた膣から血と精液が、はしたない音と共に漏れ出る。

「堕姫が友人を欲しがっている。一等美しいものを、と。お前ならば良い」
「私のものになりなさい」
「私のものになりなさい」
「私のものになりなさい」

 凄艶な声がエコーし続け、それが夢か現かも分からないうちに気を失った。


:現実に於て2
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