し
「……おい、ばか」
「ばかってなによ」
やっと声が出たかと思えば、どうにもかわいくない返事で。
おまけに喉は痛いままで。
原田は眉間に皺を寄せてしかめ面だった。
「おい」
「……なに」
「お前の手、冷たいんだけど」
しっかりと握ってるくせに。
私の手なんて十分すぎるくらい冷たいのは、わかってて。
私の手の冷たさと同化して、温度なんて分からないくらい麻痺してしまえばいいのに。
「そっちは熱い」
「はあ?んなことねぇし」
反抗的で、挑発的にものを言い合う私たち。
それとは逆に、繋いだ手は、
次第に、
力がこもっていった。
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