愛してんの
放課後。
いっつも待ち合わせしないし、大体は俺の方が遅いから、あいつが勝手に待ってる。
あいつじゃなくって、あ、あさ……朝香。
だぁ!無理!駄目だ!キモいキモくなる。死にたくなる。
因みに、今日は部活が珍しく早く終わってしまって。
「…………はぁ、待つか」
首のネックウォーマーに顔を口元まで埋める。
「………っ、寒い」
門のとこに背中を預ける。
「えっ、りゅーくん?!」
あ、来た。
「………ん」
ぴょこぴょこ走ってくる小動物の方へ向いて、聴こえるか聴こえないかの声で返事をする。
目が合えば、へへへーと笑ってくれるこいつは、なんでこうも素直なのか。
「りゅーくん待ってくれてるの初めてだねっ」
「…普段は俺が遅いからだろ」
「へへ、そうだね」
俺はこの笑顔が、とてつもなく、とてつもなく…「西荻夫婦ーばいばーい」
………いま考えてたことが恥ずかしすぎる。
自分がキモい。
西荻夫婦って……、嬉しいこと言うな、にやけるだろーが。
「えへへー、やめてよ、照れるじゃん」
只でさえ寒さで顔が赤くなってるのに、さらに顔を真っ赤にして笑う。
…………照れてる。
「なぁ、帰ろう」
「えっ、待って!じゃあね、ばいばーい!」
こいつの照れ顔なんか、俺だけ見れればい………、相変わらずキモ。
prev next