苦境ののち快晴

「あーやばいわ、そろそろ」

「ガチで大丈夫なの?」

「あったまクラクラしてきよった」

何となくこの状況に慣れてきたのか、彼は少し、気持ちは楽そうだ。

「それよりさ、」

「ん?」

「そろそろ終焉と行きましょーや」

「え?」

何言ってるんだろうか。

まさか、ここまで怪我させてしまってるのに今更諦めたりとかしないわよね?


「俺がさ、もし血ぃ垂らしてる俺が、街中走ってみたら、向こうはすごく、不都合じゃね?」


あ………。

「いっちょ、やってみるか」


そう言うと、彼は一旦、「休憩」と言って足を止める。

市街はもう目の前にあって、沢山の人が行き交う。


「そろそろだな」

きっと、後ろのあの人を待ってたんだ。

なるべく引き付けて、あの人が犯人ですと、確証づけるために。


「行くぞ」


彼は一歩、その明るい場に足を踏み出した。

彼は私を抱えながら、周りに注目を浴びせる。

彼の脇腹から地面へポタポタと零れ落ちる赤い滴は、周囲の悲鳴と恐怖を与えた。


私たちはもう、助かったのだと、自覚していた。



少ししてから、あの人は捕まって、彼は足を止めた。

ゆっくりと私を下ろし、ゆっくりとその場にしゃがみこんでゆく。

彼の腕を軽く持って、彼に合わせて、わたしもゆっくりとしゃがんだ。



「………よかった、」

彼はそう、私に告げた。


私は彼をしっかりと抱き締めて、彼も私も、静かに泣いた。

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