帰り道の無口な女
それは、日課になった。
ある日の残暑日に、一軒家の窓から顔を出して髪の長い女が俺を見ていた。
同い年くらいだろうなと、なんとなく感じたが、余りに幼いような気もした。
一言も発さず、彼女は俺をじっと見る。
何か思い出したような顔をすれば、彼女は笑顔で俺に手を振ったのだ。
そんな日があってから、彼女はその時間になると必ず窓から俺がくるのを待っていた。
もう夏休みが終わるというのに、部活、部活、部活で帰りは汗だくで遊ぶ暇もない。
運動部になんて入んなきゃよかった。
なんて矢先、こんなことがあってみろ。
汗だくでアイス食ってる時に、色白な髪の長い女の子が、笑顔で俺に手を振って見ろ。
嬉しくて部活帰りが楽しみで仕方がない。
そういや最近、マネージャーの相田に「笹岡ってなんか最近バカっぽいよね」なんて言われた。
浮かれているとか、調子に乗ってるとか、そんなアホらしい雰囲気を充満させてるらしい。
ふざけんな、誰がバカだ、誰がアホだ。
どっちかというと俺はモテる方なんだぞ!…なんて冗談はさておき。
俺は今日もこうして彼女に笑顔で手を振るのだ。
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