Fortune Flower

好き、

嫌い。

好き、

嫌い。

好き、

……………………………………嫌い?




最後に残った一枚の花片を、やまねがくしゃりと花ごと握り潰した。

「真琴っーー!こんなもので君の愛を計るなんて僕はどうかしていたよ!」

握り潰した花をポイッと投げ捨て、やまねが真琴に抱きついた。

「だっーー!やまね、抱きつくな!暑いだろーがっ!!」

暑さに辟易していた真琴がうんざりとしながら、やまねの身体を押し返す。

夏の陽射しが照りつける厳しい暑さの中、真琴たちはモンスターの討伐に出掛けていた。
討伐というか、今回は調査みたいなものだった。

近隣の村の外れに、はぐれモンスターが出没して人々を襲っているという情報が入ってきて、無視するわけにもいかないので、皆で調べにやって来たというワケだ。

それで調査場所に着くまでの、暇潰しにアリスがやっていた『花占い』にやまねが興味を持ち、アリスと一緒になってそれをやっていた。

この時、アリスが誰のことを占っていたのかは置いといて、勿論、やまねは真琴のことを占っていた。
だけど、さっきから何度やっても嫌いで終わってしまい、やまねが歩いた跡には、点々と無惨な花たちが散っていたのだった。

「やーまーねぇぇ、真琴ちゃんから放れろよ!迷惑がってんだろっ!」

そこへチェシャ猫が、いつものようにやまねと真琴の間に割って入ってくる。

「何だよ、バカ猫。君のその暑っ苦しい毛の方がよっぽど迷惑だろ?ねぇー真琴?」

「うっ、そんなことないよねっ!真琴ちゃんっ!」

縋るように真琴の顔を覗き込んだチェシャ猫にやまねはムッとした。


やまねはチェシャ猫が大嫌いだ。

ネズミとネコという関係性も否定できないけど、チェシャ猫の性格自体が嫌いというか、苦手だ。

チェシャ猫は金色の猫目がくるくると良く動き、表情が豊かに変わる。
それに伴い感情も起伏豊かに富んでいる。
ちょっと馬鹿にしたりするだけで、怒ったり、泣いたりして、すぐに感情を剥き出しにしてぶつけてくるし、怒ったと思ったら、次の瞬間には笑っていたりするのだ。

バッカじゃないの!
いつもへらへらしちゃって!
とそんなチェシャ猫について行けずに、
やまねは呆れ果てるのだ。

何よりも真琴にくっついていると、いつも邪魔をしてくる所が一番嫌いだ。




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