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星に願いを
「ポチ!これを書くのよ!」
と、手渡されたのは片端に紐がついた長細い薄水色の紙片とペンだった。
「……アリスさん、これは?」
頭に幾つもの疑問符を浮かべ、瞳をキラキラと輝かせる目の前の上官に、ポチは尋ねた。
「あら、そーいえばポチは初めてだったわね」
可愛いらしい表情で悪戯っぽく、アリスが微笑む。
「これはね、私がいたあっちの世界の『七夕』っていうお祭りに使うものよ」
「はあー………」
「この紙『短冊』に願い事を書いて、笹っていう木を飾り付けて、これを吊すと願いが叶うって云われているのよ」
「なんだか、クリスマスみたいなお祭りですね」
渡された紙片の使い道が判って、漸くポチは納得する。
つまりはその『七夕』というお祭りをするから自分にも願い事を書けと云うことらしい。
「やることはクリスマスっぽいけど、そのお祭りに纏わる話がすごいロマンチックなのよ!」
きゃっきゃっと、はしゃぐアリスはまるで幼い少女のようだ。
長いブロンドの髪をさらりと揺らして煌めかせ、澄んだ蒼い大きな瞳をさらに大きくし、頬を微かに朱く上気させて力説する。
「星に纏わる話なんだけどね。彦星と織姫という恋人同士がいて、二人は仕事をサボってデートばかりしていたの。それを見兼ねた神様が二人を天の星の川を挟んだそれぞれの対岸に引き離して逢えなくしちゃったの。逢えるのは一年に一度だけ。それに雨が降ったら川が溢れて逢えなくなっちゃうの!切ないけどステキな話よねー……で、二人が逢えますようにと、願いを込めて笹飾りを飾って、星空を眺めるのよ」
「確かに、女の子が好きそうなお話ですね」
でしょでしょと、楽しそうに話すアリスを見ていると、こちらまで楽しくなってしまう。
ポチがそんなアリスを優しく愛しそうに見つめていると、
「って云っても、実は私もこのお祭りのことを知ったのは数年前なのよね♪」
「えっ?」
ぶっちゃけ発言をして、てへっとアリスは茶目っ気たっぷりに舌を出した。
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